ご難続きの箱根だが 翠松園の夕食 | 御食事手帖

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6月30日に小規模な噴火が認められた箱根山
警戒レベルは3に引き上げられ、いよいよ観光客の足が遠のく事態となった。
火山列島に生まれた宿命であり、これまでは山の恩恵を頂戴していたわけだから、ここは耐え忍ぶしかないだろう。
東京の人間は、過度に神経質にならず、それこそ「勝手に救済」と称して出かけてあげるのが一番だ。救済好きだったはずのグルメ出版文化人は、箱根など眼中にないようだが。

そんな正念場に立たされた箱根の宿「翠松園」、夜の日本料理はなかなかのものだ。

6月の献立。




前菜いろいろ。
・揚げたスルメを乗せた金時草とアワビのお浸し。(スルメがおもしろいアクセント)
・タコの柔らか煮と叩きオクラ(意外に上手な煮方)
・アオリイカのこのわた和え(とても酒がすすむ)
・真鯛と白ずいきの磯辺餡(餡が割と品が良い)
・鴨の香草蒸し 焼きネギ青唐味噌 (鴨ネギのバリエーションで工夫あり)
・トマトのバジルカステラ(もはや創作料理)
・稚鮎の真砂揚げ(まだどうにか温かかった)
・新丸十レモン煮(さつまいものこと)


お椀は、もろこし豆腐と金目鯛塩焼き、刻み茗荷とへぎ柚子。
もろこし豆腐というのは、一見安っぽいが、自然な甘みがじんわりきておいしい。
金目鯛はパサつき気味。茗荷はやや効き過ぎか。吸い地も濃すぎ。




旬のお造り。
イサキの焼き霜。ヒラスズキ。ウニ、なす、じゅんさい。赤貝とメジマグロのトロの握り鮨。
どれも「素晴らしい」というレベルではないが、腹が立つほど悪くもない。
握り寿司はご愛嬌だろうが、お握りの域を出ないので、やめた方がよいかも。


おすすめ追加メニュー、熊本直送の特選馬刺し。
程よいサシで、筋も少なく、するすると食べられる。
造りよりも気が利いている。


強肴は江戸前穴子の小鍋仕立て。丸茄子、椎茸、湯葉、三つ葉などが入っている。
石焼ビビンバで使う容器みたいなので出てくるので、これはチンチンに熱い。
穴子はほろりととろける状態で、茄子と良く合う。甘めの出汁もまずまず。


焼き物は、黒毛和牛のグリル。淡路産玉ねぎの海老フライに実山椒のソース。
なぜ、肉と海老フライなのか。一瞬、お子様ランチを想起してしまった。
脈絡のない盛り方だが、脂のある肉に爽やかなソースは好相性。


しめは、イタヤ貝の炊き込みご飯。大葉をふって、黄身卵をつけて食べる。
貝の出汁がコメにしみ込んで、結構うまい。卵は過剰ではあるが、さらに脳へのアピールが強まる。


水菓子はかぼちゃプリン、カラメルジュレ、お茶のアイス、ブドウやスイカなど。
最後まで手を抜かず、充実。

部屋食ではないが、個室でゆっくり食べさせてくれて、サービスも気持ちがよい。
この夏は、行けば必ず温かくもてなしてくれるだろう。
火山で死ぬ確率より、交通事故に合う率の方がはるかに高いはず。どこにいたって、運しだいだ。
私は今が狙い目だと思う。