今、一番気に入っている日本料理店がここ「晴山」。
いまどきの日本料理店主というと、妙に「オレ様」だったり、おカネの話ばっかりだったりと、食えない御仁が多いが、ここではそんな嫌味は感じず、リラックスできるのがいい。
万事文句なしだから、当然ながら予約は取りずらい。それさえなければ、というのは客の都合というものだろうから、我慢するしかない。

寒い冬の初手は、白子のすりながし。具として、帆立貝とあわ麩が入っている。モチっとしたあわ麩の食感が結構。
下の黒石がちんちんに熱く、ゆずの香りが強すぎるくらいに立ち込める。白子の優しい甘さには、ややパンチがありすぎるか。

ほっき貝を刻んだものとしんとり菜という菜っ葉の上に、山芋と追い鰹のジュレをかけたもの。
一転冷たい料理で、口の中に温度のコントラスト。
しんとり菜というのは、くせがなくしゃきしゃきでまあまあ。

越前ガニのしんじょ椀。これは抜群にうまい。
アマダイとタラのすり身で作るしんじょが実に良い甘み。
品のいい脂が吸い地に浮いて、なんともいえない。

メジマグロの炙り。生のり、赤いゆずこしょう、ネギをおろしたたれで食す。
脂ののりが半端なく、霜降り肉かと思う濃厚さ。

しゃくし菜という菜っ葉で巻いたばってら。これまたお見事。
鯖の脂と酢加減のピントがピタリと合っている。上手なものだ。

諏訪湖のワカサギ天ぷら。
結構いい型だけど、ちっとも骨あたりしない。加えて、肝が苦くない。
澄んだ白身のほのかな甘さが感じられる。

薄切り牛ザブトンにおろしと金山寺味噌。
味噌は面白いが、おろし大根は味がぼける。

寒鰆と京都のエビイモの照焼き。
適度な大きさ、適度な脂の鰆に、とろりとしたエビイモが実にうまい。
サイドのくわいチップスも馬鹿にならない。

寒ブリと聖護院かぶらの煮物。ブリ大根ならぬ、ブリ蕪。
そのかぶらが、またとろとろで甘くてたまらぬ。
ご飯は写真なし。
岐阜の網とり野鴨の炊き込みご飯。
肝、砂肝、軟骨を丁寧に叩いたつくねなど、鴨丸ごとが入り、香りも味も濃厚。
妙な居酒屋で「御狩場焼き」なるものを食うくらいなら、このご飯で鴨を味わい尽くす方がナンボかましだ。
デザートのべにほっぺのムースに至るまで、隙なし。
何度行っても失望がない。高いレベルでの安定感があって頼もしい。
次回が楽しみだ。