ラシエット・ブランシュ 白金高輪 | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

「ここはうまいな」と思う店の共通項。

1:店自身が作成したウェッブサイトがない
―― そんな面倒なことに割く労力があるなら、料理に専心しよう、ということなのだろう。加えて、インターネットなどというもので宣伝・集客せずとも構わん、という自信と生一本の心意気があると思われる。

2:スタッフがころころ変わらず定着している
―― オーナーの人格やシェフの指導力、人心掌握術などが長けていなければ、良い人材は定着しない。優秀な人材だから大事にされる、というのもあるだろうが。

オープンから15年が経ったここ「ラシエット・ブランシュ」は、1,2共に該当する店。
厨房のスタッフは出入りがあっただろうが、サービスマンは一貫して変わらず。
料理を熟知した古株が、シェフとあうんの呼吸でサービスをするのだから、理想的である。
現在のところ、厨房はシェフ1人のよう。
しかし、相変わらず精度は高く、ブレがなく、一徹ゆえの力強さがある。


シーズンに1度は食べたくなる、白子のアンチョビバターソース。
本当に飾りっ気がない。が、真っ白な木綿の生地のような、潔さがある。
生々しい白子がアンチョビの塩気をまとうと、ふわっと立ってくるほの甘さ。
これが何ともいえない。


定番のラングスティーヌとアスパラのリゾット。
これも仕事が手堅い。
甲殻類の風味と旨味が、コメ粒に浸透。ややもたっとする食感がフレンチらしい。
赤座エビの頼りなげな食感とアスパラのシャキッとした歯ごたえが好コントラスト。


新潟・網捕りの青首鴨ロースト。
料理本のお手本写真を見るかのような出来栄え。
バラ色が目においしい。
噛んだ瞬間、じゅわりとくる皮の脂がたまらない。
続いて追っかけてくる肉の血の味。軽い酸を感じるアタックの後、旨味がぐーんと伸びてくる。
野趣、と書いてしまえばそれまでだが、家畜では出せない腰のある肉汁が実に心地よい。


これも定番、クルミのクレームブリュレ。
シェフは何千回、このデザートを作ったのであろうか。
平凡さの中に、すごみを感じる。

今年で開店15年になるらしい。
飲食店で10年以上続くのは、全体の何パーセントであったか。
真の実力者でなければ、到達しえない年月であろう。
伊達ではないことは、料理が証明している。