




プレハブのような建物に、自動ドア。
客が来るたび、狭い店内に「グィーーン」というドアのモーター音が響くのが、この店の悪い名物だったはず。
そのミッシェルナカジマがついに移転、といってもすぐ横の建物に移っただけだが、構えも内装も見違えた。
店内、だいぶ広くなり、テーブルもかなり増やした。
しかし、外のスタッフは変わらず2人だけだから、混むとしんどそう。
週末の客に不満がでないか、余計な心配をしたくなる。
そんなミッシェルナカジマの料理。
8000円のプリフィックスながら追加料金が多く、結構な高値になったしだい。

前菜は、「清流鶏、猪、フォアグラのカレ カシスのグラッサージュ」。
ダロワイヨの名物、オペラをイメージした作り。
カシスのジュレが利いていて、フォアグラを引き立てている。
ただ、清流鶏なるものをあえてアピールしているのが、よく分からない。
JA岩手のブランドのようだが、調べたところただのブロイラーよりはちょっとマシ、というレベルだと思う。

こちらは定番、「ウニのサバイヨン オマール海老とコンソメゼリー添え」。
他店の類する料理に比べて、ここのはジュレがうまい。オマールの出汁がとても濃厚。
サバイヨンも精度が高い。

続いては、「兵庫産カキのフランとソテー 蕪のクリー フランス産茸を添えて」。
料理名はホームページのコピペをしているが、クリーではなくクーリ(coulis)だろう。
ついでにいうと、食材の説明をしてくれる店員さんが、やたらとフランス語を使いたがるのだが、私からすると若干滑稽である。しかも、その割にこの料理につかっているキノコの説明はしてくれなかった。
シャントレル、ピエ・ブル、ジロール、トロンペットと、定番の混合キノコ。

本日のスープは、モンサンミッシェル産のムール。
私は何度も言っているが、モンサンミッシェル産のムールの、いったいどこがうまいのか?
粒は小さく、味の濃度も低く、鮮度がいいわけでもない。なのに高い。
ミッシェルつながりで使いたいのかもしれないが、おやめなさい。もっと良いムールはある。

魚料理は、アマダイとほっき貝のポワレ。
ほっき貝は柔らかく甘くて、とても感心した。こういう食材使いを、もっとやられたらいいのに。
ほうれん草は地の物らしく、これも土の味が鮮明で香り高かった。

メインは、スコットランド産の雷鳥、サルミ風のソース。
フランスにいた頃、各地の店で雷鳥を味わったが、これは状態も良く、かなりレベルが高い。
肉はフレッシュな印象。なのに、どこかホヤのような香りをまとっている。
モモの肉も硬直がほどけていて、噛み心地がよい。
ソースが肉の風味を消すことなく、程よい重さ。
この料理で、古いローヌをやりたいところだが、この店はかたくなにワイン持ち込みを認めない。ならば、もう少しワインリストを充実させるべきだが、飲み頃のローヌなど日本ではそろえられないだろう。
追加料金の料理を選択すると、結構な額になる。なので、高いワインを頼むのはつらい。
多くの客が、グラスワインでちょぼちょぼしか飲んでないのもむべなるかな。
1本5000円で持ち込みを認めてはいかがか?と思わずにはいられない。