ナポリスタカ 神谷町 | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

イタリア人店主による本場度合いの高いナポリピッツァの店。前菜やパスタなども充実していて、レベルもそこそこ。週末は2回転する賑わいようで、独特の雰囲気も味のアクセントか。場所の割には、納得のいくお勘定で済むのもうれしい。
★★★★☆


飯倉交差点のすぐそばという立地。
秋空よりもはるかに淡い水色を基調とした店内は、ナポリのサッカーチームの色らしい。
紙屑やタバコの吸い殻が落ちていないことを除くと、さすがに本場っぽい。

水色の爽やかさとは裏腹に、店内には客と店主が織りなす熱気がこもっている。
とにかくやかましい。それがいよいよ本場っぽい。
客の構成は、日本人7、イタリア人3くらいの割合だろうか。
このイタリア人たちが、みな一様に伊達でちょい悪。
仕立ての良いシャツを着て、いい女を連れている。
見ているこっちまで、何だか気分が高揚してくる。

イタリア人が店主の店では、例えば牛込神楽坂に「カルミネ」というのがある。
しかし、似て非なるもの。
かの店でイタリア人客というのをあまり見かけない。
本場度の違いが、客の構成に明確に表れていると思う。



ピザまでの助走。まずは野菜のフリット。
茄子、ズッキーニ、黄と赤のパプリカなど。
何でもない揚げ物だけど、セモリナ粉の衣がちゃんとパリッとして、野菜には程よく熱が入っている。


続いて、いろいろキノコのパイ包み。
伊式「粉モノ屋」ということで、パイも頼んでみたが、こちらはバターたっぷりで北の方の要素を感じる仕上がり。この店で特段頼む理由はなかったか。


さらにピザ前に、いろいろ貝類のオーブン焼き。
ハマグリやムール、アサリなどだが、どれも粒が小さい。
もう少しオリーブオイルを利かせた方がよいかと。


お目当てのピッツァ。詳しくは知らないが、宅配ピザ屋として名をはせる、サルヴァトーレ・クオモへのオマージュだか何だかで考案したものらしい。日本で稼ぐ先輩に敬意を表するということか。
そんな事情はともかくこのピッツァ、実にうまい。
生地のモチモチ感はナポリピッツァの生命線だろうが、噛むほどに何とも言えない小麦の甘みが広がる。端の焦げた風味と交じり合うと、上質の焼き菓子のような趣すら感じる。
モッツァレラとマスカルポーネの2種混合チーズも大変ミルキーで、これまた上質の洋菓子を思わせるところがある。
しかし、少量ながら存在感のあるチョリソが、菓子との錯覚をきっぱり否定してくれる。
そのスパイシーさが、「もう一切れ」を欲する手を引き寄せる。絶妙な味の構成だ。


パスタも馬鹿にできない。
イベリコ豚のサルシッチャと白いんげん豆のトマトクリーム味。
名前は失念したが、腰のある麺と濃厚なソースが良く共鳴している。
本場風ピッツェリアとしてはいかがなものか、と思うほどちゃんとしたパスタだ。


ナポリは遠くなりにけり。
仮そめの南イタリアの雰囲気とざっかけない料理を楽しみに、またぜひ訪ねてみたい。