シャントレル 代々木八幡 | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

秋に本領発揮するキノコ自慢のフレンチ。サービス精神に富んだオーナーシェフにお任せしていれば、目くるめく一食が体験できること、うけ合いです。立地に難ありですが、その分、料理もワインも良心的な価格。調理場前のカウンター席は、料理好きな人にはうってつけです。
★★★★★半

私にとって今年最大の発見となった、このお店。
9月初旬の初訪問から、間髪入れずに再び行ってみました。

完全お任せのコースで、シェフも思いっきりやってくれた料理は、以下のようなもの。


アミューズは、前回と同じ内容。
キノコのクロックムッシュ、スモークサーモンのリエットなど。
揚げ焼きのようになっている薄いパンに挟まったキノコペーストが、少量ながら香りが鮮明で実においしい。これをツマミにシャンパーニュをやると、食欲が一気に開放されます。


フォアグラのマカロンと、定番のキノコのスープ。
前回も書きましたが、キノコのエキスがたっぷり含まれたこのスープ、これが深くて濃いったらありゃしません。
いや、さらりとした液体なのですが、口に含むと舌も鼻孔も、多層的なキノコの持ち味に攻め込まれて、その力に圧倒されるのです。
エスプレッソのカップ1杯分のスープが、空っぽになる時のさびしさは何とも言えません。「あーあ、飲んじゃった」の一言が、必ず口からついて出てくるでしょう。


この日のキノコたち。セップ、シャントレル、ピエ・ブル、トロンペット、ジロール。


前菜は、松茸とアナゴのフリット、万願寺の酢漬け、茄子のチャツネ、そして石川小芋とシャントレル、アナゴのテリーヌ。
喰い応えがあります。季節感もあります。
何より、テリーヌが抜群。小芋とシャントレルからくるねっとり感がたまりません。
フランスで学んだ技術を駆使して、日本の食材を存分に活かす。このテリーヌに、シェフの考え方が表れています。


本日のキノコ、オールスターズのムース、才巻エビと甘酸っぱいシャントレルのマリネ添え。
スープで堪能した凝縮感を、ムースという形で再度楽しませてくれます。
ムースだけではぼけてしまうところを、マリネの酸味が引き締めます。


昆布森の大粒カキとピエ・ブルのポワレ。
フランボワーズ・ビネガーなどを使っています。
ぷっくりしたカキを、硬くならないように上手に火通ししています。


魚料理は、錦織圭選手が好物だと言ったことで、今シーズンの価格高騰が懸念されるノドグロ。ここでセップを脇役に投入しています。
シェリー・ビネガーのソースは、結構パンチがあり、淡泊ながら脂ののったノドグロを引き立てていました。


メインは、フランス産の鳩のロースト。
この皿の脇役は、ジロールです。鳩のジュが効いたソースが、オーソドックスながら美味。
客席から丸見えのキッチンで、シェフ自らアロゼして、オーブンでいじめて、取り出してデポして、という一連の作業が観戦できます。最後のデクッパージュもお見事。
ちゃんとした修行と技術に裏打ちされた、けれん味のない鳩料理でした。


デザートのマルキーズも、クラシックなおいしさ。


いや、食うは食ったり。
腹パンパンになるまで楽しませてくれました。
やっぱりフレンチはこうでなければ。
イマドキのチマチマ料理を出している、思い上がった若手料理人どもに、ちっとは見習えと言いたいですね。

これから秋本番。ご関心のある方は、ぜひ行ってみてください。