シュマン 赤坂 | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

ワイン自慢の店ですが、料理も大変水準が高いフレンチです。師事した人の影響でしょうか、ここのシェフは臓物料理が得意で、ランチのプリフィックスでも必ず面白い一品が見つけられます。見事なワインリストも含め、通好みの店と言えるでしょう。
★★★★☆



ウソか誠か真偽は分かりませんが、ネット情報によると、飲食店の場合、開業2年で半数の店が潰れるのだそうです。
10年となると、90%弱の確率で閉店に追い込まれるのだとか。
生き残ることがいかに厳しい業界か、痛感させられる統計ですね。

そんな中、赤坂のフレンチ「シュマン」は、オープン12周年を迎えたそうです。
リーマンショックも東日本大震災も乗り越えて、積み重ねた年月。オーナーのご努力には頭が下がります。

さて、そのシュマンで12周年記念メニューというのを食べてみました。


アミューズは、そば粉のギャレット。中にはウズラ卵、上にはソシソンとパルミジャーノ。
ソシソンが本物っぽい香りとパンチ。


前菜は、泡を吹いた火星人、ではなくパセリのムース、活けの才巻エビと自家製塩イクラのアンサンブル。
スプーンを入れると、緑の淡々の下から赤い粒々と細かくしたエビが出てきます。
半生っぽいエビが甘やかで、いくらの塩気がアクセントで効いています。
なめらかなパセリのムースは香り高久、苦みは上手に制御できています。


2品目は、貝類の旨味を含ませた松茸と岡山からの有機野菜のココット・パイ包み焼き。
シェフの地元からの野菜や松茸はともかく、貝類のスープがシャバシャバで味の焦点が定まっていません。
こういう料理は、当然ながら上のパイを落として食べます。バターの効いたパイですから、受け止めるスープにも、それなりの力がないといけません。これは淡すぎるのです。
松茸を活かすためにそうしたのでしょうが、ならばパイ包みは諦めるべきだったでしょう。
ボキューズのジスカール・デスタン・スープみたいに、品がないくらいのパンチ力を持たないといけません。


魚料理は活けタラのムニエル、焦がしバター、タイムとドライトマトのソース。
カマのところを出してくれましたが、これはおいしい。
ソースが見事。タイムよりフヌイユの花が効いていて香り抜群。フラットになりがちな味の構成に、ドライトマトが喝を入れています。珍しく美味いタラ料理。


メインは、スコットランド産山うずらと鴨フォアグラのちりめんキャベツ包み、サルミソース。
これまた、お見事。「ヒラマツ」でも超高額の似たような料理を出しますが、こちらの方が上をいきます。
トロンペットは上に乗っているだけでなく、ムース状にして下に敷いてあります。それに加えての、濃厚なサルミソース。香りとコクが一層複雑になり、山うずらとフォアグラのコンビをがっちりキャッチしています。

デザートの国産栗の渋皮煮と洋ナシのタルトも、大変結構でした。

ごく短い期間限定のコースでしたが、コスパに優れ、充実した内容でした。
12年も店を維持してきた底力を感じたしだいです。
末永くご発展されますことを祈るばかり。