二見 長崎県・茂木 | 御食事手帖

御食事手帖

主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

長崎の魚介をたらふく食わせてくれる料理屋。カテゴリーは料亭ですが、値段は極めてフレンドリー。橘湾に沈む残照を眺めながらの夕食は、舌も目も満足させてくれます。ただ、田舎の料理屋ゆえ、サービスは無茶苦茶。行く方は、覚悟しておきましょう。
★★★★半☆


長崎市街地から車で15分ほどでしょうか。
ビワで有名な茂木の海辺に佇む古びた料亭です。
1933年創業と言いますから、その歩みは三菱重工長崎造船所と重なるのでしょう。
景気が良かった時は、重工の宴会所として華やいでいたと聞きます。
今はその面影もなく、いつ行っても静かに食事ができます。
料亭といっても敷居は全然高くありませんので、老若男女、どなたでも気楽に行けますよ。

目の前の橘湾から海水を引いた生簀がウリ物。
鯛やヒラメをはじめ、長崎の地の魚を泳がせておき、客がきたらさばいて出します。
生簀の魚が美味いかどうかと言われれば、決してベストな食い方ではないでしょう。
ただ、1万円以内の料金で、眺めの良い座敷を使わせてくれて、大量の魚を食わせてくれるのはうれしいものです。


昭和情緒たっぷりの座敷。


必ず初手に出されるのが、ザッコエビの踊り食い。
ビチビチ跳ねるエビで客をキャーキャー言わせる趣向です。
ただ、味は決して美味いものではありません。


夏場は、毎度たっぷりの鱧が出てきます。
骨切りが雑なので食感は悪いですが、鱧そのものはまずまずです。


この日のお造りは、1キロ弱のコチ、鯛と伊勢海老でした。
「鯛やヒラメ、伊勢海老は珍重しませんので、雑魚を出してください」と事前にお願いしてもダメでした。
「お客さんに鯵や鰯は出せません」とのこと。プライドがあるのでしょうね。
コチは、身がコリコリと締まっていて、ほのかな脂と甘みが繊細。


伊勢海老が大事そうに抱いているアワビは、バター焼きに。



こちらは鯛のアラ炊き。
たまり醤油にたっぷりの甘味を溶かし込んだ煮汁。これを脂ののった鯛の身に絡めて食べると、下手味ながら酒はすすみます。


ここの名物は、砂浜に見立てた鯛の塩焼きなのですが、「焼いた鯛は食いたくない」と峻拒したところ、渡り蟹に差し替えてくれました。

長崎で蟹といえば、竹崎のが有名ですが、これも結構ミソが詰まっていて、身の甘みもなかなか。

この他に、お椀や天ぷらなども出てきますので、量的には十二分です。
ビール以外の酒の持ち込みOKで、お金も取りません。
良いことずくめの料亭ですが、唯一の難点はサービス。
お運びさんは、料理や皿を投げるように置いていきます。
せっかくきれいに盛った刺身も、すぐに小さな皿に移し替えてしまうし、飲みたくもない吸い物を「早く飲め」と強要するし、うんざりさせられます。
この店に行くなら、「このサービスも名物」、と腹をくくるしかありません。

人に難ありではありますが、長崎へ行く魚好きの方は、一度はトライしてみる価値があるでしょう。