




ランチでの訪問の場合、私は基本的にブログは書きません。
値段を抑えた昼のコースを食べただけでは、その店の実力は分からないですよね。
ランチコースをチョロッと食ったくらいで絶賛するのもおかしいし、こき下ろしているのも不当だと思います。
食べログ族には、この手合いが多いですね。
この店「レセゾン」の場合は、例外です。
まず、夜に行こうと思っても、高すぎて、おいそれとは行けません。
仕方なくランチでの訪問となるわけですが、しかしこれが決してバカにできない、ちゃんとした料理が出てくるのです。料金を考えれば、当たり前かもしれませんが。
ということで、またしてもレセゾンのランチ、今回はこんなものを喰いました。

4皿構成のコースで、前菜、魚、肉料理は各2種類から選びます。
こちらは前菜、「煮こごりに閉じ込めた冷製ポトフ 雲に見立てたレフォールとともに」。
パリに住んでいた頃、家の近くに、ポトフ専門店がありました。店名は忘れようがありません、「ル・ポトフー」(笑)
こんな専門店、経営が維持できるんかいな?冬はともかく、夏はどうすんだ?、と半ばバカにしておりましたが、そんな私もいつしかこの店の虜になりました。
この店、夏場は「冷やしポトフ」が名物で、これが何とも言えず美味。
煮凝りまみれになったキャベツやネギをつまみに、冷やしたクリュボジョレーをゴキュゴキュ飲むのは楽しいものでした。
ちなみに、冬はもっぱらテイクアウト。鍋を持っていくと、どさっと注いでくれました。
前置きが長くなりましたが、そんな夏の冷やしポトフを思い出させてくれた一品。
ただし、レセゾン版は見事に洗練されています。
西洋わさびの香りがほのかなクリームが、あっさりした牛のすね肉などにさわやかな濃度をつけています。
ヴォアザン氏の下で長く務める料理人が考案した前菜なんだとか。いつの日かシェフが離日しても、こういう人材が残ればやっていけるかもしれませんね。

こちらは、「穴子のロティとジロル茸 すだちのほのかな香り」。
穴子の火通し、食感が素晴らしい。しこしこ、ムチムチしていながら、生ではない。
すだちは、かすかに香る程度。白焼きの進化系でありながら、ジロールなどと一緒に食べると立派なフレンチになっています。
ヴォアザン氏は、すっかり日本の魚に精通したんですね。

メインは「ココットで調理した豚頬肉 赤玉ねぎとポテトを添えて」を選択。
一転、ものすごくクラシックなビストロ料理。
ただ、そこはレセゾンが出すものですから、細部がちゃんとしています。
赤玉ねぎがとことんまで炒められていて、その甘みが極めて濃厚。
ややあっさりした頬肉ですが、この玉ねぎをまとわせると、バランスがとれます。
煮詰めた汁が実にうまく、これとパンだけで何杯か飲めそうでした。

デザートは「伝統菓子 ババ ラム酒風味!」と題したもの。
ラム酒風味というか、目の前でマルチニックのラムを瓶から注いでくれます。
クリームにはプチプチしたバニラビーンズがたっぷり。
隣のテーブルのおばさんが、「あ、私、お酒ダメ!」といって、ラムを拒否しているのを見て唖然。じゃあ、なんでババを頼んだの?と突っ込みたいところ。
不思議な女性が多いですよね。例えば、頼んでおきながら、「私、甘いモノは苦手」とかなんとかいって残す人。
単に飽食がすぎて、人間の本能がイカレテしまっているだけではないでしょうか?
そんなことはともかく、何度行ってもここのランチは食べ甲斐があります。
下手な店で夜に高い値段を取られるくらいなら、レセゾンのランチの方がなんぼかましでしょう。