クラリタ ダ マリッティマ 腰越 | 御食事手帖

御食事手帖

主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

いつの季節に行っても失望させられることのないイタリアンです。相模湾の各所で採れた魚を使った料理もさることながら、肉料理も悪くありません。値段も大変リーズナブル。行けば必ず「こういう店が近所にあったらな」と思うことでしょう。
★★★★★半


このブログでもすでに何度も取り上げているので、もう飽きた、という方もおられるでしょう。
しかし、ここへ行くと、ついつい何か書き残しておきたくなるのです。

この店、「クラリタ」の良さは何か?
一番は、安定感でしょう。
厨房2人、外1人、男性3人ともずっと変わりません。

昨今は東京のどの店も、スタッフの確保が大変なようです。
せっかく色々教えても、なかなか定着せず、ポンポン店を変えていく若者が多いのだとか。
飲食店の求人採用はさぞかし大変なんでしょうね。

人が変わらないというのは、それだけでも特筆すべきことなのかもしれません。
調理の2人の無言の連携は、いつもながら見事でした。

そんなクラリタ、初夏の料理はこんなものを食いました。


前菜は、「三崎産コチのサラダ サルデーニャ産からすみ添え」。
写真では見えませんが、サラダの下には薄切りのコチがずらりと並んでいます。
このコチが、実に良い鮮度。歯ごたえがシコシコとして、白身の軽快な風味に濁りがありません。白身自慢の寿司屋、築地の「喜楽」にも負けてません。
あっさりしたコチとイタリアの脂があるカラスミが良く合います。


前菜2は、「三崎産カマスと地野菜のセモリナ粉フリット」。
アツアツ揚げたてが出てきました。
カマスを頬張ってホフホフやると、青魚っぽい香りがテーブル上に漂います。
シンプルだけど、モノがいいから美味い。
ズッキーニやオクラもカラリと揚がって、塩加減も絶妙。白ワインの良いつまみになります。


パスタ一皿目は、またもやカマスを選択。しかし産地は別のようです。
「腰越産カマスと焼き茄子のタリオリーニ」。
ほぐしたカマスと茄子が細麺に程よくからみつきます。
皮は外しているものの、茄子からは香ばしい風味が漂ってきて、何とも言えません。
夏らしいパスタです。

先月「イルリフージョ」のブログで書きましたが、カマスと茄子のパスタは、「本場の味わい」とは別の、日本人向け料理なのでしょうか?
いえいえ、全く違います。
海沿いの街で店を構え、地の魚と地の野菜を使って料理するのは、本場と全く同じです。
食べログあたりで偉そうなことをぶっている人ほど、本場を知らないくせに「本場のあの迫力ある味わい」などとレベルの低い似非うんちくをひけらかすわけです。
皆さま、食べログトップレビュアーなる者の妄言に惑わされませんように。


パスタ2品目は、「ラガーネ 仔羊と湘南レッドの煮込みソース」。
卵を入れずに打った幅広パスタに、コクはあるけど重すぎないソースが良く合います。
ローマあたりのリストランテで出てきてもおかしくない、クラシックなパスタです。


メインは、「やまゆりポーク スペアリブのバルセート煮込み パルミジャーノチーズのリゾット添え レモン風味」。
蒸し暑い日でも食が進むよう、工夫が凝らされた肉料理です。
バルセートの酸味が、脂の重みと良いバランス。
パルミジャーノのリゾットが食い応えを増しつつ、しかしレモンの風味が爽やかな後口にしてくれます。
「迫力」はないかもしれませんが、夏場のメインとしては、「こういうのが食べたかった」と思わせる一皿です。


最後に締めパスタ。
「やまゆり牛トリッパと大根のカザレッチェ 辛いトマトソース」。
抑制の効いた辛さのアラビアータ。上手に処理されたトリッパ。噛むほどに小麦の甘さがにじんでくるショートパスタ。
これまた上手に作っています。感心。
腹にスペースが残っているなら、デザートよりパスタを、と思わずにはいられないお店です。


客の多くが車で来るのでしょうか。
他のテーブルは、あまりアルコールを飲んでいない様子。
こんな料理を、ワイン無しで食べられる人の特殊性はともかく、お店は気の毒です。
長く続けて欲しいので、経営状態の安定を心から祈るばかり。