




喰善、と書いて「しょくぜん」と読むそうです。
修行先から1文字、ご主人の名前から1文字。お師匠さんの命名なんだとか。
毀誉褒貶、いろいろある中東氏ですが、弟子の門出にはたくさんの器をプレゼントしたそうで。
なかなか出来ることではないですよね。京都へ行ってみたくなりました。
さて、オープンから半年ほどのこの店。
客数も制限しつつ、試行錯誤を重ねているようです。
12000円のコース1本ですが、これが大変充実した内容で驚きました。

美しい八寸。
奥に見えるのが、房州産のあわびとずいきなど夏野菜の赤紫蘇ジュレがけ。甘酸っぱい味わいはよく工夫されていました。一瞬、フレンチかと思いましたが。
鱧の蒸し寿司、鯖の燻製、あんきも、いずれも結構でしたが、何より炙った生々しいくちこに顔がほころんでしまいました。

新玉ねぎとスナップえんどうの白味噌椀。
東京で白味噌を出すところは少ないですね。これはあっさりさらっとしていて、とても上品。
新玉ねぎの自然な甘さを殺さず活かす味噌の加減が絶妙。

房州の鰹。行者にんにく醤油というのが、実に気が利いています。
鮮度も申し分なし。

造りは、鱧の焼き霜、淡路の真鯛、あおりいか。
こんな時期なのに、鯛が見事なのに驚きました。しっかりした歯ごたえと、ねっとりくる旨味がたまりません。焼き霜は、荒木町の「うえ村」くらい生々しい方が良いように思いました。

続いて、煮物椀。鱧と冬瓜、じゅんさいです。
出汁はかなり味がついています。東京の人の舌に合わせているのでしょうか。
鱧、じゅんさい、共に「青華こばやし」に比べると極めて控え目な分量。

炭火でじっくり焼き上げた琵琶湖の稚鮎。
これぐらいのサイズが一番うまいですよね。カリッとクリスピーで、味わいは澄んでおり、たで酢は不要でした。

煮物はシャラン産の鴨と丸茄子。治部煮風です。
本家もシャラン産がお好きなようですね。鴨もさることながら、茄子がうまい。
これまた濃いめの味の煮汁をしっかりふくませていて、酒が飲める煮物です。

フィナーレは、おくどさんで炊いたご自慢のご飯。
最初に食わせてくれる「煮えばな」が絶品で、米の持つみずみずしさ、香り、甘さを堪能させてくれます。きれいな水をたたえた田んぼで、たわわに実った稲穂の姿が頭に浮かぶ、米の美味さでした。

出身店同様、ご飯にはメザシ。これも炭火でじっくりとあぶってました。
明太子、ちりめん山椒も、共になかなか。

ぬか漬けもりっぱなもの。人参の味が濃く、噛むほどに甘さが増しました。
銀座5丁目の好立地で、このコースが12000円なら納得でしょうか。
皿だしに時間がかかったりもしますが、仕事ぶりを眺めていると苦になりません。
また食べたい、と思わせる魅力が結構あったので、遠からず再訪したいと考えます。