




他店ではなかなか見られない、黄色い看板。入り口には時代がかった「仏蘭西料理」の文字。
イマドキの女子などを寄せ付けない要素が随所に見られる、昭和系フレンチです。
随分と久々で訪問しましたが、壁紙などはだいぶお疲れのご様子。
しかし、料理の方はちっとも古臭いと感じませんでした。
以前はアラカルトのみだったような気がしましたが、今は品数を選べるコース形式になっていました。
食材の客見せも、かつては巨大な牛の肉塊をシェフが抱えて持ってくるスタイルでしたが、それもなくなり、ごく普通になりました。
さて、4皿コースで頼んだ料理。どれも食べ応えがありました。

冷前菜は、アカザエビのマリネを注文。見ての通り、随分おとなしいポーション。
「と村」ほどではないものの、エビ自体は立派なサイズで、鮮度も申し分ありません。
上にのせたカラスミも効いています。
ごくシンプルですが、分かりやすく美味しい一皿。大事なことだと思います。
ちなみにツレの方が頼んだ名物料理うにジュレも分けてもらいました。
食べログなどではこの料理について「塩辛くて食べられない」などとありましたが、全くそんなことはありません。
コンソメの香り高いジュレは、穏やかな塩加減。過不足ありませんでした。
これが塩辛いというなら、魚の干物や生ハムなどは致死量の塩分ということになるでしょう。
ワインを飲まないランチ族のたわごとに過ぎません。

温前菜はフォアグラのポワレ、筍添え。
フォアの質が申し分なく、ソースが正統派で、仏蘭西料理らしさを存分に発揮しています。
筍の焼き具合も、上手でした。

続いて、魚料理はノドグロのローストを選択。
これがまた、実にしっとりと焼き上げられていてうまい。
素材の質がいいことを、上にのせた肝の味が物語っています。
ただ、赤ワインのソースがイマイチ頼りないように思いました。
ツヤツヤ、ミロワなソースを期待していたのですが、驚くほど軽かったです。

メインは、鳩のローストを注文。
昔のイメージでしょうか、牛肉などはうっかり頼むとすごい量が出てくる気がしてしまい、量が半羽と決まっている鳩にしたしだい。
これまたしっとりとした火通しで、肉はジューシー。
内蔵のソースは、一見重そうですが、食べてびっくり。意外にもピュアでゴテゴテと手を加えてません。全体を通して言えることですが、余分な贅肉が一切ない、筋肉質な料理という気がしました。
メインの肉料理のことも塩がキツすぎるだの、辛くて食べられないだの、食べログのおこちゃまたちがケチをつけていますが、それは味覚が定かでないだけの話。
塩分量でいえば、甘みでごまかされたその辺の焼肉の方がよっぽど多いでしょう。化調たっぷりのラーメンもそうです。
おこちゃまたち、モノ申すなら、一度本家フランスへ行ってからにしてほしいものです。

最後のプチフールがてんこもり。
こんなサービス、昔からでしたっけ?
ともかく、久々の訪問でしたが、量が程よくなっていたのはうれいしかぎり。
今はフレンチでもイタリアンでもケチくさいポーションが主流になっていますから、その点だけでも再評価に値します。
たまにはうかがいたい一軒になりました。