




荻窪に続いて、普段は縁もゆかりもない目白へ出かけてみました。
お店の看板を見て「あれ?綴りが・・・」と思ったのは私だけでしょうか。
「Vingt-quatre」(24)ではなく、「Vin quatre」(ワイン4?)となっています。
仮に24ならマックや救急病院みたいですし、ワイン4だと意味不明です。
不思議な店名の「ヴァンキャトル」、メディアでは「ル・ブルギニヨン」で長年スー・シェフを務めていた、というのがウリのようです。
プロフィールをみると、スタートは辻のリヨン校だそうで。
その後のスタジエールも短期だったようですから、料理人としてにキャリアのほとんどは東京ということのようです。
では、「ル・ブルギニヨン」仕込みの臓物系クラシックかと思いきや、これがまたそうでもなく、コンセプトが曖昧な料理でした。
夜は皿数が違うコースが2種類のみ。

アミューズはなかなか充実。
左のロリポップみたいなのは、マグロにチーズ等のパウダーをまぶしたもの。
真ん中は、トマトのジュレにパプリカのムース。
右は、トマトのパンに黒オリーブと茸とクリームをまとめたもの。上に豆苗がちょろんと出て、春の芽吹きを表現しています。
トマトのジュレの甘・酸のバランスがとても心地よい味わい。

前菜1は空豆のスープ。牛出汁のジュレの下にはミル貝とアジのタルタルが敷いてあります。上にはオカヒジキと海ぶどうのトッピング。
ミル貝の味と磯やヨードの香りが支配的で、空豆の淡い風味やジュレが吹き飛ばされてしまっています。素材どうしが持ち味を消し合うことがないよう、一皿を構成するのが腕の見せ所でしょう。

前菜2は、イカスミのエクレア、ブーダンノワール入り。リンゴの千切りやリンゴのピュレに加えて、新生姜のワイン煮も添えられています。
「ル・ブルギニヨン」らしさを垣間見せますが、しかし軽い。今度はブーダンにパンチがありません。それより、少量添えた生姜の方が口にガツンときます。ワインによってはぶつかるでしょう。

魚料理は、ハタのローストとホタテのポワレ。
ホタテは無難においしいのですが、しかしどこか鉄板焼きのようでそっけないです。
ハタの方もこの時期どこでも使っているからでしょうか、ソースも含め、印象が薄いです。

メイン1は、ビュルゴーの鴨、カルダモンのソース。白アスパラ、筍、ヤングコーン添え。
家鴨料理には、あまり萌えっとこないため、ことさら無難な料理に見えます。カルダモンでマグレブ的エキゾチック感を出しているようですが、そもそもソースが少ないし、コクの点で線が細いように思いました。
日本人向けに軽い料理を志向しているようですが、それは同時に、特徴を失い、フレンチ好きを引き付けない料理になる危険もはらんでいることを認識した方が良いでしょう。

メイン2、最後にめっちゃクラシック。牛ほほ肉のマデラソース煮。
ねっとりとゼラチンが入ったほほ肉は、ソースも含め大変良くできています。
が、少ない。2口分です。
最近、コースのみでやっているフレンチは、本当に量が少ないですよね。
やせたい女性を対象にしているのでしょうか。
せっかくの外食です。どんと食わせてください。
それと、ここまでの流れでいうと、「なぜに最後だけ、どクラシックなの?」という疑問がわいてきます。

日向夏のデザート。

イチゴのムースとリュバルブ。
さて、この店も問題はワインリストです。
ブルゴーニュ偏重なのは、ソムリエ氏のお好みなのでしょう。
ジョルジュ・ルーミエを集めるのも、結構なことです。
しかし、料理が8000円ほどなのに、誰が3万円前後のルーミエを飲むのでしょう?しかも若すぎるヴィンテージしかないし。
それは、ソムリエ氏の自己満足にすぎません。ソムリエとは客に仕える商売であって、「オレのコレクション」を披歴する稼業ではありません。
自店の料理と価格、客層、世人の趣向、最新の産地動向・・・などなど複雑な要素が絡む合う連立方程式を解きあかし、最善の1本を提供できるよう備えるのが、飲み物係の職務と私は考えます。
いろいろ書きましたが、「少量軽め、時々クラシック」というコンセプトが修正されれば、料理の方はもっと良くなるような気がしました。
機会があれば、また試してみたい一軒です。