サンカラ屋久島の夕食 | 御食事手帖

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雨と巨木の島、屋久島のリゾートホテル「サンカラ」での夕食。
「okas」のオープンキッチンには、「サンカラリゾート」というグループの総料理長が陣頭指揮にあたっていました。
このグループは神戸・北野のレストランに加え、ニューヨークのハドソン川畔にシャトー・ホテルも有しているのだとか。
総料理長は現在、ニューヨークを拠点にしているそうなので、屋久島にいるのはGWなどの繁忙期だけかもしれません。なので、私が食べた料理のクオリティがいつも維持されているかどうかは定かでないこと、あらかじめご了承ください。

総料理長氏の経歴をネットでみたところ、渡仏してロブションやトロワグロで修行、となっていました。年齢的に考えると、ロブション第一次引退(笑)の時期と重なりますが、どこの店で修業したのでしょう?
ちなみに、背格好やツラ構えは、なるほどトロワグロのミッシェルに、どことなく似ています。

帰国後は、ミクニさんのところの丸の内で総料理長を務めたそうです。
おそらくは、ここで地産地消料理というコンセプトを学ばれたのでしょうね。

さて、自称「サンカラ・キュイジーヌ」という地元食材重視の料理。
しかし、屋久島では畜産がないようで、地元食肉というのは手に入らないとのこと。
それ以外は、色々と面白い食材を味わうことができました。


まず冷前菜。「佐賀県産ホワイトアスパラのブランマンジェ、阿久根産雲丹とキャビアのせ」。
「なんだ、アスパラも雲丹も地元食材じゃないじゃん」と思ったあなたは心が狭い。
島で採れないものは、九州各地から吟味して取り寄せているそうです。

アスパラの茹で加減は過不足ありませんし、ブランマンジェも野暮ったくありません。
雲丹やキャビアをのせる必要があるかどうかは疑問ですが、客を喜ばすためには華やかさを出したいのでしょう。


温前菜は、「屋久島・早堀筍の温製フラン、コンソメロワイヤル仕立て」。
ブランマンジェの後にフランはいかがかと思いましたが、料理自体は良くできています。
特にコンソメが意外とクラシックで香りとコクがしっかりしていました。
本州のに比べると、筍そのものがあっさりしていて風味の力強さに欠けます。フランにして食わせるのは正解かと思われます。


魚料理は「安房沖・タカバのコンフィ、麦生・和田農園、橙のブイヨン仕立て、山野草添え」。
安房沖とは、ホテルの前に広がる海です。タカバは真ハタのこと。
脂の少ない南方の白身を、5~60度の油で低温調理し、しっとりと仕上げています。
橙の香りがするブイヨンが、また基本に忠実で、芯がしっかりした味わい。
山野草は、ツワブキや沖縄でいうハンダマ(水前寺菜)やサクナ(長命草)、キクラゲなどが入っていて、香り、食感、苦みなどが複雑に交わります。
このあたり、地産地消料理の本領発揮でしょうか。


メインは、「鹿児島・南薩摩の茶美豚のロースト、屋久島産初夏の野菜添え」。
茶美豚は「ちゃーみーとん」と読むらしいです。
配合飼料に、緑茶粉末やさつまいもを入れて肥育するのだとか。お茶の産地ですからね。
総料理長自らが火通ししていましたが、硬からず、ムラもなく仕上がっていました。


デザート1は「屋久島産・ビワとタンカンの花、バニラのパンナコッタとビワのコンポート」。

デザート2は「鹿児島産さがほのかのムースグラッセ」。
ちゃんとパティシエがいるだけあって、いずれも水準に達しています。

このコース料理、東京で出てきたら「別に普通」と思うことでしょう。
しかし、ところは屋久島。
食材の入手からスタッフの確保まで、さまざまな制約がある中でやっているわけです。
その努力を想像すると、大健闘と言ってあげるべきでしょうか。
ごきげんな旅の空ゆえ、評価が甘くなりがちだったかもしれませんが、少なくとも食べていて腹の立つことはひとつもなかったこと、ここに付言しておきます。