「レ・セゾン」のランチ | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

評価の定まっている店を改めて褒めても仕方がない、とついこの間、書いたばっかりなのに、すみません。
ネタ切れにつき、これ以上ないくらいの超有名店を取り上げます。

帝国ホテルの旗艦レストラン「レ・セゾン」。
夜はおいそれとは行けない超高額店です。
が、ランチであれば、最安コースが6800円。
さらに、「インペリアルクラブ」というのに入会すれば、20%割引券をゲットすることができます。
まるで帝国ホテルの回し者のようですが、雰囲気、食器、サービス、それにヴォアザン氏の料理、それらを総合的に勘案すれば、お値打ちと言えるのではないでしょうか。

来日して何年か知りませんが、会うたびにどんどん腰が低くなるヴォアザン・シェフ。
日本の食材にもいよいよ精通してきたようです。
何より、よく店にいますね。立派なことです。


さて、ちょっと張り込んで、4皿8500円のランチコースを注文。
選べる品数は各2品しかありませんが、前菜、魚、メイン、デザートのプリフィックスです。



前菜は、下仁田ネギのピュレに、ミキュイのフォアグラをのせた料理。
フランス人が作ったとは思えないほど、塩が抑え目です。
その分、ネギの青さ、甘さがはっきり伝わってきます。これは素材の持ち味を活かす、和の発想なのでしょうか。
鴨のフォアグラにも、最小限の調理しか加えていません。脂が重くなく、香りが澄んでいて、ネギピュレと共に、なめらかにちゅるんと胃に落ちていきます。

皿の横に添えてあるのは、あさつき。
ビジュアル的に、プラスかマイナスかは、好みが分かれるところでしょう。
それはともかく、ネギ本来の香りがしっかりしており、この料理の根源が「土」であることを、食べる側に再認識させてくれます。
中央に注いだ、レモン風味のクリームも、柔らかな酸味が良いアクセント。

下仁田ネギのこの料理、かなり完成度が高いです。


写真を撮ったものの、何だか分からないほどバブリー・・・。
今さら泡泡なんて、ちょっと古いんじゃないの、ヴォアザンさん。
と思わずにはいられない2皿目は、北海道産のホタテのポワレ。
泡は、すだちです。
ホタテの下には、ほうれん草。上にはサフランで色と香りをつけたたまねぎ。
ネギの次はほうれん草で、また土を感じます。
ホタテも半生で火通ししてあり、なんだか最初の皿と構成がかぶっているように思うのは私だけでしょうか。


メインは、アグー豚。
シェフは、沖縄好きなんでしょうか。
アグーのロースは、抹茶と昆布のパウダーをかけて、揉みこんだのだとか。
抹茶で京風テイストを、そして昆布ではやりの「旨味」を加えたのでしょうね。
外国人が好きな「和」の要素を、じゃっかん無理やりに盛り込んでいるような・・・。
しかし、味はとても良いです。
白いのはサルシフィのピュレで、ソースは鶏のブイヨンがベースで、黒こしょうを効かせたもの。
このソースが、とてもクラシックで落ち着く味わい。
量が少ないのは不満ですが、料理としてはとても面白く、かつおいしい。
血統としては白豚の比率が高そうなアグーでしたが、脂身の質は見事でした。

これにデザートがつくのですが、おススメは何と言っても、サントノーレです。
私は愚かなことに赤い果物のロゼワインジュレがけ、などというものを頼んでしまいましたが、心底後悔しています。

さあ、これで8500円+税サ、引くことの20%は、高いかどうか。
私はお得だと思いました。
ただ、この日は若いソムリエだったからでしょうか、以前は豪快に注いでくれたグラスワインは、ケチな店と変わりがない量に減ってしまい、大変残念。
飲む量が増えると、お会計は一気に高額化しますので、油断なりません。

また割引券が送られてこない限り、ちょいちょいと再訪はかなわぬお店です。