雲林 神田 | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

「原価率50%くらいでしょうか」と豪語する創作中華料理店。確かに1万円のコースはお得感たっぷりです。野菜をふんだんに使うヘルシーさと、味わいの優しさが受けているのでしょう。連日満席も納得がいきました。
★★★★☆


新規オープンの店が、話題の店となるための基本戦略。
まず当初は利益度外視、高額素材をふんだんに使った原価率の高いコースで客を集める。
客入りの具合を見ながら、徐々に値段を上げていき、人気と利益の両方が維持できる価格で落ち着く――。

赤坂のフレンチ「ライラ」なんかは、このパターンなのでしょう。最近行ってないから、今はコースがいくらになったのか知りませんが。

一方で、オーナーシェフの善良さにより、原価率が高いままで続いていくコスパ優良店というのもありますね。
私の知る限りでは、日本料理だと「青華こばやし」、中華だと広尾の「ジャスミン」あたりが該当するでしょうか。

淡路町の裏通りにある中華料理店「雲林」も、良くは存じませんが、善良オーナーのお店かもしれません。
初訪問で1万円のコースを試してみましたが、なかなか張りこんだ素材を使っていました。


まず初手は、台湾カラスミと千葉の芹の和え物。
自家製ではないので、質はどうかな?と思いましたが、意外にも食えるカラスミでした。芹の苦みが臭いをおさえるのに効果的。

続く、「“海と山の幸”本日のおまかせ前菜7品盛り」は蝦夷アワビなんかも入っていて、華があります。どれも淡い味で、日本人好みの仕上がり。


前菜の後は、「宮廷料理」と銘打つご自慢の一皿。「肉厚な大フカヒレ≪毛鹿尾ひれ80g≫の譚家式煮込み」というのが登場。
確かに立派なフカヒレでした。黄色というか、黄金色の煮汁がとても美しく、また味が絶妙。
譚家式というのは、清朝末期の譚家菜の流れを汲むものなのでしょうか。
良くある醤油煮込みよりも、品があって、清く澄んだ味わいが極めて印象的でした。


魚料理は、「メバルの強火蒸し、乾し肉と黄ニラの焦し醤油かけ」。
メバルは皿の奥底に埋もれ、もっぱら干し肉と黄ニラが全面に出てくる料理。
あっさりした味付けながら、素材の持ち味がアクセントとして効いています。


次の料理も驚きでした。「『香港の高級乾貨』の発財(髪菜)オイスター煮込み」。
中国の干しシイタケ、キヌガサ茸、魚の浮き袋など、高級乾物がいろいろ入った豪華版。
当たり前ですが、出汁が極めて濃厚。だけど、くどくはありません。
冬の乾燥で痛んだ唇が、コラーゲンを吸い込んで一気に回復。
深みがあって、体にもいい煮込みです。

メインには、赤城黒毛和牛を使った料理が出てきます。
これに麺か炒飯がついて、杏仁豆腐、マンゴータピオカ、フルーツのジュレがけの3点盛りデザート、さらには上質の台湾凍頂ウーロン茶まで出てきて、ようやく終了。

1万円でこれだけ食べられたら、十分でしょう。
満足度の高さでは、広尾の「ジャスミン」の方が上ですが、ここも大変健闘しています。
連日満席なのも合点がいきます。

とにかく、もう一度、乾物煮込みが食べたいので、必ず再訪したいと思っております。