シュマン 赤坂 | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

オリジナリティと「正統」が交わり合う料理を食べさせるフレンチ。名物オーナーが集めたワインリストは圧巻です。窓の広い店内の雰囲気も良く、総合点を考えれば、料金は値頃と言えます。接待からデートまで、幅広く使える佳店です。
★★★★☆


オーナーがサービスマンの店――。
すぐに思い出すのは、パリの「タイユバン」でしょう。
ブリナーさんが亡くなって、もう何年が経ったでしょうか。
「パリの夜の商工会議所」を多年守り続けた名物オーナー。
私にとって、初めての三ツ星レストランがこの店でした。

テーブルで「仏和料理辞書」を広げた私に、ニコニコと微笑んでくれたブリナーさん。
「フランス語でしか伝わらないニュアンスがあるから、メニューはやっぱり仏語で読めないとね。勉強、頑張って」とリラックスさせてくれたのを思い出します。
本当に居心地の良い店でした。何度通ったことか。


さて、この店が東京の「タイユバン」、とは思いませんが、オーナーが名物サービスマンである点が共通する「シュマン」。
他店を圧するワインリストを誇る点も、似ているでしょうか。

眼鏡をかけた控え目なシェフの方は、風貌が若干ブラスに似ている、といったら褒めすぎ?

そんなシェフが作る料理。
和の食材も大胆に使いつつ、フレンチの正統はあまりはずしません。
手間暇もかかっていますが、コースはかなりリーズナブルな料金設定です。

アラカルトで注文したのは、以下。


「3皿の海からの恵み  鮮魚のマリネと冬野菜のグレック 柚子の香り  ローストした殻カキと岡山県産トピナンブール(菊イモ)のヴルーテ、蟹と帆立貝のラヴィオリ,トリュフの香り」

前菜三種盛り合わせ、といった感じでしょうか。華やかですね。


キクイモのブルーテのほのかな苦みが、カキと良く合っています。


ラヴィオリは、もうひとつ工夫がないと、印象が残らないかもしれません。


メインの前に出してくれた、ジビエのコンソメ。
これ、絶品でした。たまげました。
風味の凝縮感が見事。スープでありながら、肉をかみしめているような力強さ。
喉を滑り落ちるときに、野趣あふれる滋味が体中にグーッと広がっていく感じがします。
この1杯をすするためだけでも、行く価値はあります。


メインは、野鴨のサルミソース。
これが最高、とは思いませんが、少なくともひとつ前にアップした「諸菜 匠」よりは何倍も注意深く火を通しています。
この鴨は茨城産で「魚を食べている」とのこと。
なので、新潟や富山のように穀類を食べている野鴨と、全く違う風味です。
よく言われるアンチョビ臭とかくさや臭が強く出ていました。
好き嫌いは分かれるでしょうが、これもまた野鴨。私はワインしだいで、どちらも楽しめると思いました。


グルメ本などで話題になることはあまりないようですが、ちょくちょく出かけたくなるお店です。