あらや滔々庵 夕食編 | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

旅館での食事は、部屋出しの方がいい。

私もそう考えていました。

せっかくくつろぎに出かけたのですから、自室でダラッと食事をしたい。
他人に目を気にすることなく食事を楽しみたい。

部屋食のメリットは色々あるでしょう。

しかし、料理をおいしく食べるという観点からすると、キッチン至近のダイニングで食べた方が良いに決まっています。
部屋食だと、調理場から料理を運ぶ途中の温度管理が難しいですね。
テーブルウォッチもままならないので、料理を出したり下げたりするタイミングもうまくいきません。

部屋食でも見事なサービスをするのは、修善寺の「あさば」くらいしか思い浮かびません。
逆にダイニングでも楽しく過ごせる宿は、結構いろいろあります。
最近だと、壱岐の「海里村上」や箱根の「翠松園」がいい例です。
無理な部屋出しより、ダイニングの方がまし、という気がしています。

さて、伝統と格式が重荷となっている「あらや」さん。
部屋食の宿の夕食は、慇懃な仲居さんにやられっぱなしのひと時となりました。

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初手は、枝豆豆腐。
そもそもの話、この宿、料理の一覧すらくれません。いまどき珍しい不親切さ。
それはともかく、この料理、味より漆器が素晴らしい。このあたりは、さすが伝統と格式。

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続いて八寸。
イカの金山寺味噌和えはうまいけど、どこか居酒屋チック。
どじょうのかば焼き、白瓜の昆布締めも、垢抜けない感じがします。

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八目と瓜をタネにしたお椀。吸い地は濃いめながら、まとも。
しかし、これも漆器の方が印象に残ります・・・。

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このクラスの宿にしては力のはいっていない造り。
甘エビ、イカ、シマアジって、ベタ過ぎです。
器は須田青華。

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ご自慢の岩ガキ。こちらで原価を使ったせいで、造りが貧相になったのでしょうか。
ごく普通の岩ガキで、感動するほどのものではありません。

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焼き物は、のどぐろ。酸味のきいた蓼ソースはそれなりです。
しかし、厨房から遠路はるばる、エレベーターなどに乗ってやってきた焼き物ですから、温度もぬるいし、皮もしめります。

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ゆりね饅頭にグリーンピースのすり流し。
非常に美しい九谷焼で、器には感動しました。

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これもご自慢の鮑。
しかし、なぜかアボカドが入っているわ、バイ貝で水増ししているわで、とても褒められた代物ではありません。手口がケチ臭い。

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酢の物は、橋立で揚がった毛蟹。
空入れは、須田青華の「紙風船」・・・、じゃなくて、まさかの模造品でした。
おいおい、ここまでの感動は帳消しだよ。

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最後もがっかり、とろろ御飯
なんで?と言いたくなりますね。

手ごわい仲居さんの慇懃無礼攻撃にも参りました。
八寸とお椀が同時に出てきたので、「ペースはゆっくり目でお願いします」と頼みました。
そうしたら、今度は待てど暮らせど、料理が出てこない。
「ゆっくりとおっしゃいましたからねぇ」と不敵に笑われてしまいました。
1万円くらいチップを包まないと、親切にはしてもらえないんでしょうね。

恐るべし、伝統と格式。