




BYO。Bring your own。
自分の持っているワインを、お店に持ち込む行為。
大別して、2つの目的に分けられるでしょう。
ひとつは、お金の節約。
儲けが乗かって法外に高いお店のワインを避け、抜栓料を払っても安くすむワインを持ち込む。
もう一つは、お店にはない上物・レア物ワインを楽しみたい、というもの。
店舗スペースが狭く、地震が多い日本の飲食店では、大量のワインをストックすることができません。
欧米とは、スペースコストが段違いに高くなるわけです。
であれば、お店が無理して多種多様なワインを抱え込まずとも、一定額の持ち込み料を徴収して客にワインの用意を委ねる、というのは極めて合理的な制度と言えるでしょう。
単なる節約のために、安ワインを持ち込むのはセコい行為と言わざるをえません。
が、後者が目的であれば、良質の料理を提供する店ほど、シェフの苦労も報われるというもの。
BYOを認めないお店も、もうちょっと柔軟に考えてみてほしいところです。
さて、京橋の裏通りのこのお店。
冒頭書いたように、実に素晴らしいシステムです。
ワイングラス1個につき800円×飲む人の数。
ボトルごとにグラスを交換しなければ、極めて安価にBYOを楽しめる制度なのです。
これを考えついたお店の方は、ワインの聖人サン・ヴァンサンの祝福を受けることでしょう。
店名のとおり、料理はトスカーナ風のものが中心。
名物の「CAB 認定 純血ブラックアンガス牛サーロインのビステッカ」を含む5250円のコースは、大変食べごたえがあります。
肉魚の前菜盛り合わせは、量も十分。
パルマハムやモルタデッラ、スモークサーモンやつぶ貝のマリネなど、種類もいろいろあって楽しめます。
前菜2品目は、白アスパラのブリック包み揚げ。
中にチーズと生ハムを入れたイタリア風春巻きは、白ワインに好相性。
パスタは2点盛りとなります。
トスカーナ風のはずですが、なぜかウリは「本当のカルボナーラ」なるもの。
生クリームを使わない、ローマ正調レシピのようです。
かなりモタモタしてますが、パンチェッタの塩気がきいていて赤ワインがすすみます。
メインのアンガス牛は、赤身のうまさがなかなか。
牧草で育てた牛は、霜降りと違って、肉汁のエキスに鉄分を感じます。
それが、赤ワインのタンニンをより引き付けるように思います。
絶賛すべき料理、ではありませんが、気楽なトラットリアとして水準に達しています。
ワイン好きとの飯会にはぴったりの一軒として、機会あれば再訪したいものです。