鮎正 新橋 | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

6月からの夏場は鮎だらけの店。好きでなければ、辛いだけのコース料理です。あれこれ料理法を工夫しているのですが、そこまでして鮎だけを食べ続ける意味は、はっきりいって見出せません。話のタネには、なると思いますが…。
★★★☆☆


道路工事が続く新橋の一角。
鮎好きのメッカは、いかにもカウンター割烹然とした風情の店です。

店内、もちろん満席。
みなさん、一心不乱に鮎を食っています。

鮎信仰を持たない私は、予備知識なしの初訪問。
店の名は知っていましたが、本店が島根県で、高津川のモノを朝一で空輸しているとか、その他諸々の御託は店内で知りました。

さて、その鮎尽くし。

初手は、取るに足らない前菜盛り合わせと鮎骨せんべい。
感想が残らないレベルの料理です。

次いで、お椀。
白みそ仕立てで、これはなかなかの味でした。

続いて、背越し。
生の鮎を薄く輪切りにした刺身です。
臭みもないけど、香りもあまりない。
コケからくる植物性の香りが鼻にきません。
良い鮎は産地の山のにおいがする、という通人がいますが、その意味では高津川の風景がわいてこない味わい。

次が、おそらくメインイベントの塩焼き。
大きいのと小さ目のが一尾ずつでした。
さすがにパリッと焼けていて、腹わたの味もそれなりですが、絶賛するほどのものか、と聞かれると答えに窮します。
これも通人いわく「良い鮎は蓼酢不要」とのことですが、ここのは酢でもつけないと食べ飽きしてしまいます。

一山越えて、次もまた鮎。
鮎のホイル包み焼きが登場。
醤油だれで煮るように火を通した鮎は、身がホロホロとして食べやすい。
ただし、タレの味が強いですから、鮎そのものの微妙な風味は消されてしまいます。

もう鮎はちょっと・・・、というタイミングで出てきたのが、子うるか。
鮎の卵巣と精巣を塩漬けにしたものだそうで。
これは、普通のうるかとは全く別物。白に山吹を帯びた色合いで、独特の食感と甘みがあります。酒肴として素晴らしく、この日一番のおいしさでした。

一息ついたのもつかの間、またしても鮎本体。素揚げが出てきました。
もう論評するのも疲れます。

フィナーレはもちろん鮎ごはん。
半端ない量の鮎が含有しています。
上手に骨抜きがされていて、とても食べやすい。
この飯は、鮎の香りがむんむん。1シーズンに一度、食べる価値があるとすれば、唯一この鮎ごはんでしょうか。

とにかく大量の骨を食べることになるので、骨粗しょう症が気になるご婦人にはもってこいのコースかもしれません。
が、よっぽどの鮎好きでないかぎり、最後まで気持ちを切らずにいるのが難しいでしょう。

鮎のシーズンオフに出てくるすっぽんや猪の方が目当ての客が多いというのもうなずけます。
私としては、しばらくは鮎なんて顔も見たくない日々が続きそうです。