うずらのメルゲーズ詰め | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

たいていの食材は何でも手に入る東京。

しかし、まれにあります。
フランスにいた頃はいつでもどこでも食べられたのに、東京では探してもなかなか見つからない食い物。

例えば、メルゲーズ。

辛味のある羊のソーセージのことです。
日本では、肉屋やデパ地下は言うに及ばず、ネットショップでもまず見かけません。
多くのグルメさんたちも、そもそも存在すら知らないでしょう。
もとはマグレブ産まれでしょうが、フランスでは完全に市民権を得た食べ物です。
どこかの家でバーベキュー、となったらパプリカ色に染まったこのソーセージは、高い頻度で出てきます。

炭火で焼くと、もうもうたる煙があがります。
ガブっとかじると、まずクミンなど香辛料のアタック。続いて、羊肉の風味。肉々しい噛みごたえです。
辛味はじわじわやってきます。

街角のアラブ系スナック屋では、マグレブ式のパンに挟んだホットドックにして売っています。
これをかじりながら、パリの右岸、北アフリカ情緒がただよう19区あたりをぶらぶら歩くのはいいものです。


さて、先日ランチで訪れた赤坂の「シュマン」。
ここで、思いがけずメルゲーズを食しました。
といっても、ここのはデゾセした丸のウズラの腹にメルゲーズの肉を詰めたもの。
本来、羊腸に詰めてソーセージにするところを、ウズラにしたわけです。

ここのシェフは、なかなかやります。
パリッと皮目を焼きあげた淡泊なウズラに、やや刺激弱めで香辛料を抑えたメルゲーズ。
バランスがとれています。
ジュのソースは、しっかりと主張が明解で、パンチのある詰め物に負けていません。
安いランチなのに、よくぞここまで、と感心しました。

メガネをかけた細身のシェフ。
雰囲気がちょっとだけ、ミッシェル・ブラっぽい(お世辞が過ぎるでしょうか)。

ニコリともしないつっけんどんなサービスの女性が玉にきずの店ですが、料理は悪くありません。
メルゲーズのような郷愁を誘う料理が食べられるなら、ちょいちょいうかがいたいものです。