日系3世のブラジル人力士・魁聖が、朝日新聞に語った言葉です。
なんでも、日本に来るまでは、魚を食べたことがなかったのだとか。
「鍋や煮魚は今も苦手」と記事にはあります。
そんな外国人力士でも、「あれは大好き」と言わしめるアラ。高級魚クエの別称です。
大きいのは、3~40キロというのもざら。近海の怪物魚です。
舌の肥えた相撲取りが楽しみにするわけですから、冬の九州場所の頃には、現地で大量に消費されることになります。
天然物はそんなにたくさん採れるわけではありません。
当然、品薄になり、値段が跳ね上がります。
旬は冬ですが、通年採れる魚です。
今ならまだそんなにバカ高くないアラを、「こばやし」で食べさせてもらいました。
刺身で分厚いのを3切れ。普通の店なら9切れは取れる量です。
ただでさえ美味いアラを、片側軽く昆布で締めて水を抜き、旨みをのせているのが心憎い。
ガブリと頬張り、ムッチムッチと噛みしめます。
甘い。うっすらと広がる脂が甘い。
でも、その脂が澄んでいます。透明感のあるクリアーな味わいに、軽い昆布のアミノ酸。
うますぎる刺身です。

合わせたのは、ユリス・コランのブラン・ド・ブラン。
デゴルジェしてから1年半のもの。
極辛口ですが、こちらも雑味がなく澄んだ味わい。
温度を高めにすると、かりんやアプリコットの風味がたちます。
すっきりした飲み口は、魚介を使った和食にドンぴしゃでした。
ツメをかけたアワビの塩蒸し。「鶴八」を思わせる逸品です。
穴子と湯葉の煮物、新筋子、松茸と青菜のおひたしの3点盛り。
揚げたオコゼをタネにしたお椀。これはお見事。昆布が香るきれいな吸い地と、濃厚なタネのコントラストが素晴らしい。
天然うなぎの白焼き。炭火で皮目はパリパリに、腹側はじゅわじゅわと脂を吹いたところをがぶりとやります。
炙った秋刀魚に山盛りのアサツキとみょうが。今年も秋刀魚はいいですね。
炭火で焼いた松茸と極上和牛のヒレ。
炊きたての白飯を一緒に頬張りました。美味いに決まっています。
良い造り手のシャンパーニュと、こばやしの料理。
月に一度の幸せな一時。他店ではなかなか味わえません。