この問いには、こう答えるとしましょう。
「2つの場合に限られます。1つは誕生日。もう1つは誕生日以外の日」。
最近、なんのかんのと理由をつけては飲んでおりますが、昨夜は特別な1本を開けました。
![$御食事手帖](https://stat.ameba.jp/user_images/20120830/12/jinsei-j-blog/c9/be/j/t02200293_0800106712162719709.jpg?caw=800)
アラン・ロベールの「ル・メニル」1989年。マグナムです。
何が特別かというと、この造り手はすでに本拠地のメニル・シュール・オジェ村からいなくなり、シャンパーニュ造りを辞めてしまっているのです。
つまり、瓶詰して出荷済みのものと、残りのストック分が飲み尽くされたら、もうおしまい。
ネット酒屋を探してみても、もはや見つかるものではありません。
不味ければ、消えても構いません。
しかし、ここのブラン・ド・ブランは、メニルで造られるシャンパーニュの中でも、五指に入る名品と評価されているのです。一部のマニアの間では、廃業を惜しむ声がたえません。
私にとっては、最初にして、たぶん最後のアラン・ロベール。
心して飲みました。
グラスは、大き目の白ワイン用から始めて、最後はブルゴーニュ用のバルーン型を使用。
温度は10度でスタートしましたが、途中から12度くらいまで上げました。
見た目は、茶が入り始めた熟成感のある色合い。脚が長いです。
最初に注いだ時の香りは、アカシアの蜂蜜。むんときます。白系の花々も。
次いで、ヴィエノワーズリーの香ばしさとバターの風合い。キャラメリゼしたナッツなど。
終盤は、圧倒的なきのこ。干したポルチーニの戻し汁や白トリュフのニュアンスです。
穏やかな酸味。柔らかな酸化具合です。口の中で転がしてもトゲのない丸さ。調和のとれたワインです。そう、わずかに泡のある、優れた白ワイン。
前にも書きましたが、私は長らくシャンパーニュをバカにしていました。
自分の無知のせいで失った時間の重さをひしひしと感じています。
今、この歳になって、ようやくヴィンテージシャンパーニュの奥深い世界を垣間見ました。
こんなワインとまた出会いたい。でも、アラン・ロベールは遠く彼方へ消えてしまいました。
これをもって「知らなければよかった」と思うのはネガティブにすぎるでしょう。
一会でも叶ったことに、喜びを感じずにはいられません。
秘蔵の1本を譲ってくださった方に、心から感謝します。
追記:飲み残した四分の一ほどを、次の日の昼に飲みました。
泡はほとんど消えていましたが、その分、白ワインとしての素晴らしさ、その全容が浮かびあがりました。良く熟成し、複雑でコクのあるそれは、ブルゴーニュのトップクラスに引けをとるものではありません。
全く恐れ入りました。