美味なる夏の魚たち | 御食事手帖

御食事手帖

主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

月に1度うかがうのが恒例となった「青華こばやし」。
冬場の豪勢さとコストパフォーマンスは東京随一、と誰しも認めるところでしょう。
しかし、夏も素晴らしいのです。

まず、前菜の蒸しアワビが冴えわたります。

続くお椀。
たっぷりの塩水うにと、これまたアワビを贅沢につかった「いちご煮」。
さっとレアに火通ししたうにが、海の甘い養分を口いっぱいに感じさせてくれます。
吸い地もお見事。うにとアワビからくる旨みを計算にいれた出汁加減で、出来上がった時の椀だねとの絶妙なる調和を醸し出しています。

造りは、まこがれい。
ここ以上のまこを、私は知りません。
この時期は、星がれいを珍重するのが食通なんでしょう。
でも、私はここのまこがれいで十分です。
他店なら3切れ分に相当する極厚を、がぶりと一口で頬張る。
ゴリガリ、むちむち。
たまらない歯ごたえ。肝醤油の奥深い風味。なにより、ぴったり適量の脂を含んだ清冽なる白身の味わいが、味覚の極楽浄土へといざなってくれます。

続く、イサキの叩き、これまた絶品です。
イサキってこんなにうまかったのか、とつぶやきたくなること請け合い。
しっとりと汗ばむように脂をまとった叩きに、たっぷりの浅葱とミョウガを絡ませていただきます。
焼き目をつけた外側は、とろりとやわらかく、しかし噛むと芯に歯ごたえを残しています。
状態の良い魚と確かな仕事が組み合わさって、初めて叶う食感です。

何気にうまいのが、冬瓜の炊いたもの。
ごくごくシンプルな料理ですが、主人の思想が良く表れています。
素材に手をかけすぎず、しかし持ち味を最大限引き出す。

焼き物は、この店の代名詞のひとつ、太刀魚の塩焼き。
これも、東京でここ以上のものを、私は知りません。
毎度毎度、立派な太刀です。肉厚で新鮮。
炭火でふっくらほっこりと焼き上げます。
箸でむしった直後、ふわっと上がる湯気の香りが何とも言えません。
魚好きなら、一度は食べるべきでしょう。

夏の揚げ物は、おこぜ。
これも、他所のとは、随分と差があります。
弾力のある身をギュッと噛みしめると、ジュワっと滲む底魚のエキス。
骨に近いほど、この魔性の旨みが潜んでいます。

この夏は、京都遠征はやめにしました。
行きたい店の予約がさっぱり取れなかったので。
でも、そんなに残念な気分ではありません。
東京には、この店があるのですから。