英国の大宰相、サー・ウィンストン・チャーチルの言葉。
「シャンパンは勝利の時は飲む価値があり、敗北の時には飲む必要がある」。
これをもじって言わせていただきましょう。
シャンパンは、休日には飲む価値があり、平日には飲む必要がある。
私にとって、目下ささやかな幸せのひとつは何かというと、日曜の夜に和食の料理屋で自前のシャンパンを飲むことです。
2週続けて、日曜にアンリ・ビリオのNVを飲みました。
最初は神楽坂の「ささ木」で。続いて「善知鳥」で。
どちらも若い店主の店です。
そして、大変な繁盛ぶり。日曜の夜は、いずれも満席です。
「ささ木」は、少し高級志向。
高価な食材を仕入れており、コースの価格設定も高めです。
アラカルトも充実。メニューを開くと目移りしてしまいます。
この店の出色は、お椀。
非常にあっさりしつつ、品の良い吸い地で驚きました。
店としては好きじゃないけど、京都の「末友」のお椀とよく似ています。
椀種の鱧の持ち味を生かしつつ、きっちりと存在感を示す昆布の香りが見事でした。
造りとかは、ごく普通のレベル。
秋田産の活きた渡り蟹を焼いてもらいましたが、そう驚くほどの味でもありません。
むしろ、炊いたものや手をかけた物の方がおいしい。締めの鴨ご飯も上手でした。
一方の善知鳥。
こちらは、充実のコースが5000円で食べられるという、驚異のコスパの店。
加えて、こちらもアラカルトが豊富です。
青森産の魚や野菜に加えて、前沢牛などの肉も手掛けます。
何気ない料理がしみじみとおいしくて、例えば焼いた根曲竹とか「みず」という山菜の煮浸しとかはたまりません。
甘いトマトとじゅんさいにポン酢ジュレをかけたものなどは、ドサージュ多めのシャンパーニュにはぴったり。
締めの蟹と新生姜の炊き込みご飯は、あまりのうまさに3杯もかきこんでしまいました。
日曜の悦楽。美味しい料理と共に飲むシャンパンは価値があります。
そして辛い平日、乗り越えるためには、たまにシャンパンを飲む必要があるでしょう。
つまり、いつ飲んでも心に訴える酒、ということです。