15年熟成したブルゴーニュの白 | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

買ったはいいけど、惜しくて飲めない。

我が家のワイン庫には、飲みごろも構わずに保管され続けている瓶が結構あります。
しかし、どんなに惜しかろうと、墓場までワインを持っていくことはできません。
死ねば、誰かに飲まれるだけです。

最近、そのように思考転換し始めてから、ポンポン開けるようになりました。

その1本が、ドメーヌ・ラモネの「シャサーニュ・モンラッシェ プルミエ・クリュ・ブードリオット・ブラン 1997年」。
フランスで買ったのは間違いありませんが、どこの酒屋だったか、どうにも思い出せません。

まだ早い、もうちょっと待て、と言っている間に、すっかり長期熟成となってしまいました。
意を決して、四ツ谷の「うえ村」に持ち込んで抜栓。

注いでみると、見事な黄金色。ただし粘性は落ちてます。

香りを嗅いでびっくりしました。
例えて言えば、胸の谷間も顕わな妖艶なる熟女、といった感じ。
黄桃の香りがむんと沸いてきて、そのあとにミネラルやうっすらとアカシア蜂蜜が感じられます。
胸元、ではなくグラスに鼻をうずめて、ひとしきり快感を味わいました。

ただし、それも20分ほどのこと。
その後、熟女は一挙に老けこみ、安楽椅子でゆられながら窓外をぼんやり見つめる初老のご婦人のようになりました。

それでも、元々の素性の良さは残ります。
「血統は嘘をつかない」とはフランスの諺ですが、このワインも若き日のはつらつとした美しさの面影を残しています。
雑味のない酸と、複雑に変化した果実の風味。
白子の入った餅を浮かべたすっぽんのお椀とは、優しく寄り添うような雰囲気がありました。
餅の甘みとほのかな生姜の香りで、うまくつながったのでしょう。

新作の料理「フォアグラなす」とは、合わないはずがありません。
シャサーニュらしい鉱物を感じさせる酸が、しっかりと受けとめていました。

97のブルゴーニュ白は、もう飲まないといけません。
まだ、ルフレーブのバタールなどが残っていますが、鮎の頃にでも開けようと思ったしだいです。