平 湯島 | 御食事手帖

御食事手帖

主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

立地も内装も褒めようがありませんが、出てくる肉の美味さだけは間違いのないステーキ屋です。肉だけで充分なのに、なぜか魚料理にも手を出しており、これまたそんなに悪くありません。生肉のタルタルや、締めのカレーも高水準。ただ、店内の見た目だけで受け付けない人もいるかもしれない、不思議な店です。
★★★★☆


湯島か上野広小路か上野御徒町あたりから歩いて4~5分。場末のバーたちに埋没するかのような、目立たぬ雑居ビルの2階という立地。

店内はカウンターのみ6席くらいでしょうか。これまた場末のバーを居抜きで使っているかのような趣です。雑然とした店の壁にはテレビがかかっていて、とても美味いものが食える雰囲気ではありません。

しかし・・・。
意外や意外。出てくる物は、ちゃんとしているのです。

ステーキがウリの店ですが、前菜には結構な種類の魚料理があり、刺身なんかは突出してはいないものの、それなりの質の魚を仕入れをしています。

メニューから姿を消した店も多い牛のタルタルも、ここでは美味いのにありつけます。独特の配合で、卵黄のこってり感とたまねぎの風味が鮮度の良い赤身肉を引き立てています。

細かいサシがびっしり入ったヒレのラッパ肉は、薄く切ってサッと網焼きにしてくれます。
口中にジュワっと肉汁が広がり、鼻には程よい熟成香が抜けていってたまりません。

メインは、ロースの大きな肉塊。
備長炭と稲わらをつかって、上手に焼きあげます。
外側は焦げる手前までカリッと焼き、中へいくにしたがって桜色から薔薇色までの美しいグラデーションを見せてくれます。
すっぴんのままの肉の味だけで、充分満足できる肉質と焼き方です。

締めに頼んだご自慢のカレーは、注文を受けてから土鍋でご飯を炊き始めます。
肉のうまみが濃厚に溶け込んでいながら、スパイスの加減のおかげでしょうか、割りにサラリと食べることができます。

これだけの肉料理を出す店なのに、なぜに?と思わざるをえない店内ですが、そんなことはお構いなしという向きには隠れ家として良いでしょう。
店主の人柄も悪くありません。

気の張らない相手と美味い肉を堪能したい時に、候補に思い浮かべる1軒となりそうです。