




事前にお願いして、活きた松葉ガニを1匹食べさせてもらいました。兵庫県・浜坂港からのもの。蟹好きにはこたえられないコースでしたが、私は毎度のごとくカニには針が触れず、もっぱらそれ以外の料理がおいしかった・・・。
ミシュラン新一つ星店となることが決まって、上げ潮ムードのうえ村氏。
しかし、右腕ともいうべき美人バイトさんがしばらくお休みとなり、喜びも半減のようでした。
さて、料理ですが、「カニ1匹は食べるけど、カニづくしは勘弁して」との私のオーダーに応えてくださり、初手から自家製からすみ(しっとりナマナマしくて美味しい)、雲子の茶碗蒸し、鯖ずし(抜群)と続けてくれました。
造りは、珍しく3点盛りで、えぼ鯛、13キロのクエ、近海マグロ。
クエは脂の乗りが良く、えぼ鯛も一切れでしたが、まずまず。
クエは、昆布を敷いて薄味をつけたちり蒸しも出してくれました。これは、当たり前ですが、腹のあたりの脂とゼラチンがついたところが絶品。ただ、クエに関しては、下五島の福江で20キロのすごいヤツを食って以来、それが基準になってしまったので、感動しにくくなりました。
焼き物は、鰆の西京実山椒焼き。鮮度を誤魔化すための小細工ではなく、上質の鰆に手をかけた一品。「こばやし」の塩一直線と、まさに好対象です。実山椒のほのかな香りが鰆と合い、これはこれでおいしい。
さてさて、肝心の蟹です。
冷蔵庫からジタバタする蟹が出てきて、他のお客さんびっくり。
ザクザクと脚が切り落とされ、頭もパカっと開頭されました。
ミソがつまった甲羅を火にかけ、フツフツと煮立ったところに、なんとたっぷりのウニを入れて出してきました。
蟹好きにとっては邪道かもしれませんが、私には、これがこの日一番。あと、もういりません、という気分になりました。「かにうに」はうまい。実にうまい。
続いて、焼きガニ。
新鮮だし、甘いし、申し分ないんでしょう。
でも、私はやっぱり蟹の身を愛でることができません。
京都の丹後半島へも出かけました。福井の三国へも行きました。
間人など「極上品」と言われるやつを出されても、全然心が浮き立ちませんでした。ミソだけくれたら、身はいらん、となってしまうのです。
石川へは毎冬のように通っていますが、目当てはもっぱら寒ブリ。蟹はスル―です。
そう、蟹はミソだけで十分なのです。
上海ガニをはじめとするもずく蟹族、好きです。ミソだけ。
竹崎や知多半島の渡り蟹、好きです。ミソだけ。
韓国のカンジャンケジャン、好きです。蟹ミソ丼だけ。
北米のダンジネスクラブも、フランスのいちょう蟹も、新鮮なミソは好きですが、それ以外はノン・メルシー。
おそらく、幼少のころから我が家で蟹を食べる習慣というのが皆無だったからでしょう。遺伝性のものだと思っております。
さて、この日最後の締めは、蟹と雲子の炊き込みご飯。
蟹の身をどっさり入れた上に、醤油で味をふくませた雲子を入れた豪華版。
これはさすがにうまかった。ご飯には蟹の出汁が良くしみて、雲子の甘い味わいとも調和します。
贅沢なご飯ですよね。
うえ村さんの「和久傳」仕込みの華麗なる蟹解体技術が見られたのは収穫でしたが、蟹の身には反応せずに申し訳ないことをしてしまいました。が、私の分も平らげた一緒の方は満足だったでしょう。