山形に定期的に行く。
出張である。
私は寺に勤めている。
山形でもお寺の儀式のお手伝いをする。
春、秋、冬の年3回お世話になる。
各季節、感じ入るものがある。
春は紅秀峰や佐藤錦の花が綺麗に咲いている。
秋は田園が黄金色に染まり美しい。
その中でも冬は衝撃を受ける。
東京育ちには考えられない光景が広がる。
とにかく雪一色なのである。
もちろん、そこで生活する方々の日常にも感心してしまう。
まず、驚くのは雪道の運転である。
私は絶対に降雪時には運転しないことにしている。
東京でも雪が降ることがある。
以前、運転を試みた。
そうしたところ、家をでるところで、早速スリップしそうになったのだ。
ところが、山形の人たちは、普段とあまり変らないように運転している。
私にはそうみえる。
とても上手なのだ。
もちろん、道路には雪が積もっている。
「スリップしないんですか」
同乗している際、怖くなり思わずたずね。
「大丈夫だよ」
しかし、あっさりとした返事である。
全く意に介していない。
次はエンジン式除雪機である。
どこのお寺さんにも置いてある。
「おはようございます」
宿からお手伝いのお寺へ到着する。
「今、住職は雪かきしているから、中で待ってて」
すると、奥さまからはそう言われる。
「おまたせ」
しばらくすると住職さんが戻ってくる。
外は極寒なのに、汗だくになっている。
冬の朝は除雪から始まるそうだ。
さらに、暖房機が凄かった。
山形の冬はエアコンだと少々物足りないらしい。
確かにどのお堂にも大きな石油ストーブが設えてある。
しかも、二台三台と置いてある。
タンクには20リットルの燃料が入る。
それが二日から三日で無くなってしまうらしい。
客間の暖房機に至っては燃料タンクが屋外にある。
しかも200リットルも入る。
暖房機に直結していると教えてくれた。
そして、なにより感服することがある。
冬場は、毎日肌をさすような寒さである。
にもかかわらず皆さん明るくおおらかなのである。
考えてみれば、これほど厳しい環境を毎年乗り越えているのである。
少々のことでは心が揺れ動かないのかもしれない。
お釈迦さまのお言葉です。
『病にかかり、飢えに襲われても、また寒冷や酷暑をも耐え忍ぶべきである。かの〈家なき人〉は、たといそれらに襲われることがいろいろ多くても、勇気をたもって、堅固に努力をなすべきである』
【岩波文庫 ブッダのことば 中村元先生訳P207】
ありがとうございました。