おままごと | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

80代のご婦人とお話をした。

 

「お仏壇を設えたいのだけれども」

 

ご主人が往生を遂げられた。

 

ご自宅でご主人さまに手を合わせたい。

 

そのような願いである。

 

「まずは仏具屋さんにてご相談なさって下さい」

 

もちろん私の勤めているお寺にも出入りの仏具屋さんがある。

 

ご紹介もできる。

 

いずれにしても、サイズやデザインを選んでいただくことになる。

 

その後しばらくして再び連絡があった。

 

「お仏壇が準備できました」

 

早速ご自宅に伺い本尊さまの開眼儀式を勤める。

 

「お茶やご飯もお供えするんですよね」

 

仏さま、ご主人さまを御供養するべく飲食である。

 

「ときにはコーヒーでも、ケーキでも差し支えありませんよ」

 

ご主人さまは甘党だったそうである。

 

さらに一ヶ月程経ったころ、ご婦人がお寺にいらした。

 

「毎朝手を合わせています」

 

生花を飾り、毎日、飲食を差し上げていらっしゃるそうだ。

 

「でもね、ちょっとオママゴトみたいに思えちゃって」

 

笑顔でおっしゃった。

 

「小さい器に盛り付けるでしょ」

 

(言われてみれば……)

 

オママゴトに似ている。

 

まもなく、ご婦人はお寺を後にされた。

 

私は、しばらく考えた。

 

(ほかにもあるかもしれない)

 

例えば、オママゴトでは対面にぬいぐるみ等を置くことがある。

 

お父さん、あるいはお母さんなどとするためである。

 

仮に決めるのである。

 

その人形に語りかけることで会話はすすむ。

 

位牌やお墓も、故人が居るところとしている。

 

語りかけて対話ができる。

 

坊さんの発言として言語道断だ。

 

お叱りをうけそうである。

 

ただ、物理的にはそうなるであろう。

 

「オママゴトも位牌も仮想だね」

 

現代の人からは見下されてしまうかもしれない。

 

ならば、現代人はいかがなものか。

 

仮に決めたことを信じていないのか。

 

国やお金はどうか。

 

仕組みが複雑で大きくなっている。

 

だから混乱してしまっているだけのように思える。

 

仮に決めたことである。

 

猫や犬にとっては関係ないではないか。

 

ご婦人は冷静な信仰心をお持ちだった。

 

そう思う。

 

私も冷静に供養念仏をお勤めしたい。

 

普通の坊さんからは逸脱しているかもしれない。

 

しかし、とても有意義な行いだと考えている。

 

 

お釈迦様の御教えです。

 

『勝利からは怨みが起る。敗れた人は苦しんで臥す。勝敗をすてて、やすらぎに帰した人は、安らかに臥す』

【岩波文庫 ブッダの真理のことば・感興のことば 中村元先生訳P38】

 

ありがとうございました。