寺の虫 | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

真夏の墓地掃除はそれなりに厳しい。

 

なげいたところで仕方がないのはわかっている。

 

寺勤めの身なのである。

 

汗だくになりながら落ち葉を掃く。

 

案外、夏も葉が落ちる。

 

暑さは木々にもこたえるのであろう。

 

乗り切るための対策として葉を落とすようだ。

 

(ちょっと休憩するか)

 

他の季節よりも休む回数が増える。

 

石の椅子にこしかけて、水を飲みながら一息つく。

 

(今年は多いな)

 

地面にばかり向けられて意識が上方にも広がる。

 

蝉の鳴き声がいつになく響いていた。

 

(そうだ植木屋さんに連絡するんだった)

 

掃除中、糞をみつけた。

 

桜の木につく毛虫のものだ。

 

名前はモンクロシャチホコである。

 

蛾の幼虫だ。

 

大きくなると五センチくらいになる。

 

「毒はないよ」

 

以前、植木屋さんから説明された。

 

その点ではお参りの方に害が及ぶことはない。

 

しかし、見た目が……。

 

だから、これ以上寄り付かないように対処してもらうこととなる。

 

(これも出てきたか)

 

ツマグロヒョウモン、つまり蝶の幼虫である。

 

体は黒く、中央横長にオレンジ色の筋がある。

 

こちらは毛がない。

 

だからイモムシである。

 

毒はないそうだが、やはり外観が……。

 

卒塔婆に目をやるとトンボがとまっていた。

 

青色っぽい尾だった。

 

シオカラトンボであろう。

 

寺の近くに大きな池や沼地はない。

 

すくなくとも2キロ程は離れている。

 

(ここまでとんでくるのだろうか)

 

小さな体なのに驚くべき持久力があるようだ。

 

都会にはビルが建ち並ぶ。

 

管理され制御されている。

 

そんな中、寺社には今でも土がある。

 

わずかながらにも自然が残っている。

 

それは、現代の都会に対して、寺社の果たせる大切な役割の一つなのではなかろうか。

 

諸法無我。

 

そういえば、夏に墓参りに来た子ども達は、蝉の抜け殻をよろこんで持ち帰る。

 

とてもよい表情をしている。

 

 

第三代天台座主・慈覚大師円仁さまのお言葉です。

 

『舶は波に翻弄されて漂流し、東から波が来れば、船は西へ傾き、西から波が来れば船は東へ傾く。波が船上を何度も洗い流す。船上の人々はただひたすら仏神の加護を頼むしかなかった。どうしたら良いか、まったく思い浮かばない。遣唐大使から水手船頭に至るまで、みんな裸になって、褌(ふんどし)を締め直した。船は座礁して動かない』

 

【出典「入唐求法巡礼行記」巻一  枻出版 「名僧のことば」 正木明先生・大角修先生著P76】

 

ありがとうございました。