立川市のテニスコートへ行った。
「たまには、ジュニアのヒッティングに来てよ」
30年程前にテニスを教えてもらっていた。
その時のコーチから誘いをうけたのだ。
現在、私は寺に勤めている。
つまり坊主である。
その前はテニスコーチをしていた。
日本ランキングを上げるために練習にも励んでいた。
だから、誘いをうけると今でも嬉しくなってしまう。
(もう50才。体力がもたない)
そんな考えもよぎったが……。
(もし相手にならなかったら、そのときはすぐに引き下がればいい)
気持ちを抑えられなかった。
性懲りもなくコートに向かった。
ついたのは19時頃だった。
ジュニア達はすでに汗だくである。
「凉心さんと打つときは、最初はゆっくりね」
試合形式練習からの参加となった。
そこで、コーチが気を使ってくれた。
(本気で打ち込んじゃうと凉心さんが怪我しちゃうから)
そんな雰囲気でジュニア達に声をかけてくれたのである。
さて、しばらくするとコート上を何かがうごいていることに気がついた。
親指くらいの大きさである。
茶色い。
気にかかり近づく。
(なんだ?)
虫だった。
「どうしたんですか」
凝視していると高校生の男の子が声をかけてくれた。
「あっ、オケラですね」
(これが!)
恥ずかしながらはじめて観た。
男の子はすぐさま捕まえてくれた。
そして、コートの外に逃がしてくれた。
さらに15分くらいたった。
サービスライン付近に黒いものがあった。
やはり親指くらいである。
(今度はなんだ?)
気にかかり近づく。
(えっ!)
私でもわかった。
クワガタだったのだ。
おそらくはヒラタクワガタだ。
ナイター照明につられて飛来してきたのだろうか。
早速コートの外に連れてった。
(このような住宅街にも生息しているんだ)
意外だった。
ただ、周辺をみてみればたしかに緑は多い。
多摩川、玉川上水、小平霊園、多磨霊園、昭和記念公園などもある。
少し北側には狭山湖、多摩湖もある。
農家もある。
(オケラやクワガタがいてもおかしくはないのか)
街なかに虫がいる。
とても温かい気持ちになった。
さて、テニスについては……。
3日経ってもいまだに筋肉痛である。
お釈迦さまの御弟子さまのお言葉です。
『森や密林のなかにいて、蚊や虻に刺されながら、そこで正しく念いを凝らして、じっと堪え忍ぶべきである。―戦闘の先陣にいる象のように』
【岩波文庫 仏弟子の告白 中村元先生訳 P71】
ありがとうございました。