東横線に乗って学芸大学駅に向かった。
友人に会うためである。
学芸大学駅に近づくと、車窓から「マッサージ&カフェ」と書かれた看板が見えた。
渋谷から横浜方面に進む右側の車窓である。
(どんなお店せなのだろうか)
組み合わせが不思議だった。
(銭湯に居酒屋が併設されている感覚なのだろうか)
私は般若湯が苦手だが、似た感覚を想像してみる。
友人とは、駅前の喫茶店で1時間程話をした。
その後、直ぐに帰路につく……、はずだった。
(こんなに天気がいいんだから)
そう思い、隣を走る目黒線の駅まで歩くことにした。
目指すは武蔵小山駅か不動前駅である。
距離は3㎞くらいであろう。
学芸大学駅前の商店街はにぎやかだった。
若者に似合うお洒落な飲食店が多い。
目黒通りまでの途中に、とても綺麗な店構えの鯛焼き屋さんがあった。
あまいものは好物である。
(食べてみたいけれども……)
だが、あまりにもお洒落なお店だったので、一人で注文する勇気がでなかった。
目黒通りを過ぎた後、横道に入ってみた。
(珍しいものがありますように)
そんな思いを込めていた。
期待通りだった。
「林試の森公園」があったのである。
木々がうっそうと生い茂る公園だった。
都心なのが嘘のようである。
地方の山林のようであり、とても心がおだやかになった。
もとは、国が森林研究を行う場所だった。
その跡地なのだそうだ。
明治33年(1900年)から、「目黒試験苗圃(びょうぼ)」として農商務省林野整理局が管理していた。
昭和53年まで研究施設だった。
現在は筑波にてその研究を続けているそうだ。
公園内を散策していると、ランドセルを背負った子が歩いていた。
14時半ごろである。
(なんて素敵な通学路なのだろう)
都会は人と人工物の世界である。
その世界に居続けると身心が疲労する。
しかし、都会ではこれを回復させる所が、なおも人や人工物だったりする。
これでは、身がもたない。
毎日、美しい自然に触れられるのはうらやましい。
人間社会に疲れたときは、花鳥風月を味わいたい。
公園を抜けると「目黒不動尊参道入口」の案内板がみえた。
最後は、お不動様をお参りして散歩を終えた。
お釈迦さまの御教えに、以下のお言葉があります。
『修行僧たちよ。修行僧たちが、林間の住処に住むのを望んでいる間は、修行僧らよ、修行僧たちに繁栄っが期待され、衰退は無いであろう』
【岩波文庫 ブッダ最後の旅 中村元先生訳P19】
ありがとうございました。