なのに、どうして | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

その壱

 

時々訪ねる霊園の近くに川がある。

 

幅は15メートルくらいだ。

 

(工事がおわったんだな)

 

先日、読経に向かった際、気がついた。

 

以前の橋は老朽化していた。

 

そのため、架け替え工事をしていたのだ。

 

(これで迂回をしないで済む)

 

新しい橋の上から水面をみつめた。

 

そこへ高校生の男の子が2人通りかかった。

 

「不思議だよな」

 

一人がつぶやいた。

 

「なにが」

 

もう一人が応答する。

 

「だってさぁ。この橋の工事に2年もかかったんだよ」

 

「それがどうした」

 

「今時、大きなマンションだって2年もあれば出来上がっているじゃん」

 

「たしかに」

 

(たしかに)

 

私も内心でうなずいた。

 

その弐

 

信号待ちをしていた。

 

すると、隣の人の携帯電話がなった。

 

「もしもし」

 

その人は電話に応答しながら後ろに下がった。

 

「どうして歩きまわるんだろう」

 

同じく信号待ちをしていた中学生が友人に投げかけた。

 

後ろをみてみると、なるほど、電話に出た人は動き回ってる。

 

「んなの、わっかんねぇよ」

 

友人は答えた。

 

「普通に会話をしているときは、身振り手振りで動くぐらいじゃんか。それなのに、スマホで話をしている人ってウロウロと歩き回る人多くねぇか」

 

「んなの、知んねぇよ」

 

(そうかもしれない)

 

私は内心でうなずいた。

 

思い当たる節があったのである。

 

その参

 

「歯が悪いの。だからお米はやわらかく炊いてちょうだい」

 

ある小学生の祖母君は、お嫁さんに向かって頻繁に訴えていた。

 

(もうお粥みたいじゃんか)

 

しかし、実際は小学生でもわかるほど十分にやわらかった。

 

ある日も、祖母君は訴えていた。

 

小学生は母親がかわいそうだと思った。

 

(おかあさんはリクエスト通りに炊いている)

 

そこで、危ういとは感じたが思い切って質問した。

 

「おばあちゃんは、お米はやわらかくないと食べられないんだよね」

 

「歯が悪いからね」

 

「じゃあなんでお煎餅は食べられるの」

 

「……」

 

祖母君が自室でお煎餅を食べているのを知っていたのだ。

 

今、その小学生は大人になっている。

 

(別の言い方はなかっただろうか……)

 

祖母のお墓参りをすると毎回思い出す。

 

そしていつも複雑な気持ちになる。

 

 

お釈迦さまの教えに以下のお言葉があります。

 

『自分を苦しめず、また他人を害しないようなことばのみを語れ。これこそ実に善く説かれたことばなのである』

 

【岩波文庫 ブッダの真理のことば・感興のことば 中村元先生訳P187】

 

ありがとうございました。