毎日コーヒーを飲んでいる。
ブラックばかり飲んでいる。
きっかけは、近所の純喫茶でアルバイトを始めたことだった。
高校生のときである。
それまでは、ミルクや砂糖が入ったものをたまに飲むくらいだった。
雪印コーヒー牛乳、マックスコーヒー、UCCミルクコーヒーなどだ。
純喫茶では、十七時から二十一時半まで働いた。
普段は、二十時半がラストオーダーとなる。
二十一時に閉店、二十一時半まで後片付けをする。
ただ、まれに早く閉めるときがあった。
ラストオーダーの際、もうお客がいないことがあるのだ。
「よし、看板をしまおう」
そんな時は、マスターの声がかかる。
私は外へ出る。
一通り外回りの片付けをおえてから店に戻る。
「飲むか?」
今度は、お誘いがかかる。
マスターがコーヒーを淹れてくれるのだ。
ペーパードリップで淹れてくれる。
豆の蒸らしかた、回しかた。
いろいろな作法も実地で教えてくれる。
店内掃除前の贅沢なリラックスタイムだ。
「お待たせ」
マスターがカウンター越しに渡してくれる。
とても香りがいい。
「折角だからそのまま飲んでみてよ」
ビックリするほど美味しかった。
以後、家では自分で淹れ始めた。
それなりの道具も揃えてみた。
マスターの作法をイメージしながらお湯をさす。
一対一で教えてもらっただけのことはある。
未熟な技術でも以前よりは味がよくなっていた。
……、と思いたい。
しかし、これだけ好なコーヒーでも飲みたくないときがある。
体調不良の時だ。
たいていは、風邪か下痢である。
先日もそうだった。
「これから熱がでるのかな」
みょうに身体がだるい。
気持ちの準備をした。
ところが……。
しばらくしても熱は上がってこない。
くだす気配もない。
しかも、翌朝にはコーヒーを飲みはじめていた。
「なんだったのか」
気になり、調べてみた。
すると、カフェインの取り過ぎが原因だとわかった。
コーヒーを健康のバロメーターとしていた。
にもかかわらず、コーヒーで健康を害してしまった。
情けない。
なにごとも程ほどが大切ですね。
お釈迦様の御教えに、以下の言葉があります。
『健康は最高の利得であり、満足は最上の宝であり、信頼は最高の友であり、安らぎ(ニルヴァーナ)は、最上の楽しみである』
【岩波文庫 ブッダの真理のことば・感興のことば 中村元先生訳P241】
ありがとうございました。