お二人のご供養を同時に勤めた。
お施主さんの娘さん姉妹の御回向だった。
とてもつらかった。
共に五十代だった。
どちらも二十代で結婚した。
お子さんも二人ずつ産まれた。
お施主さんからすれば、孫が四人となる。
どちらの家庭も円満だった。
ごく普通に平穏な暮らしをしていた。
ところが、一年半程前、病がみつかった。
しかも、姉妹がほぼ同一時期にみつかった。
定期検診でみつかったそうだ。
二人とも懸命に治療をした。
しかし、病をとめることはできなかった。
「娘達の御供養を一緒にしてあげたくて」
そのように、お施主さんから依頼を受けた。
それぞれの嫁ぎ先の菩提寺にて丁寧に御供養を勤めていただいたそうである。
だから、後生についての心配はない。
ただ、仲良しだった姉妹を一緒にご供養してあげたかったそうである。
そこで、以前からの知り合いである私に相談をされたのだ。
「それぞれの菩提寺で御回向されているのであれば」
依頼を引き受けた。
お施主さま、つまり姉妹の御両親の気持ちを察すれば身体が締め付けられる感じとなる。
お二人のご主人やお子さんの思いを考えると、頭が重くなってくる。
どれ程の悲しさ、苦しさ、悔しさであろうか。
いったいどうしてこのようなことがおこるのか。
世の中は常ならない。
そんなことはわかっている。
わかっているが……。
確かに、たとえご高齢での往生であっても悲しい。
しかし、お子さんを同時に見送るなど、苦し過ぎるではないか。
若い奥さまや、お母さまのご供養を行うなど荷が重すぎるではないか。
言葉が出てこない。
私にできることとなれば精一杯の御供養をお勤めすることしかない。
後生を穏やかに暮らしてもらえるよう、後押しの読経を行うことしか出来ない。
「凉心くん、今を大切にしなさいよ」
読経後、お施主さまが涙をうかべながら、静かに私へ声をかけてくれた。
身の奥深く突き刺さるような言葉であった。
法然上人の御教えに、以下の御言葉があります。
『先立たれた方のために御念仏をご廻向すれば、阿弥陀さまは光を放って、地獄・餓鬼・畜生の三悪道に堕ちて苦しみにさいなまれている人々を照らして下さるのです。そして、その苦しみは止み、そこでの命が尽きた後に三悪道から離れて極楽へ往生し、覚りをひらくことができるのです』
【法然上人のご法語1 浄土宗総合研究所編P183】
ありがとうございました。