飛行機 | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

仕事の帰り道、寄り道をして城南島海浜公園に行った。

 

潮風にあたりたくなってしまったのだ。
 

公園からの景色は素敵である。

 

羽田空港、航行する船、レインボーブリッジ、東京タワー、スカイツリーなどがみえる。
 

着陸する飛行機は、公園に降りてくるかのように通過していくので間近にみえる。

 

迫力満点だ。

 

それにしても、飛行機は上空をひっきりなしに過ぎていく。

 

山手線と同じくらいの間隔なのではないだろうか。

 

驚きの往来数だ。
 

そいえば、飛行機が通過した後にきこえてくる奇妙な音にも驚いた。

 

頭上を通過した後、数秒すると空が「シュルシュルシュルー」と鳴るのだ。
 

上空には何もないのに音がする。

 

ポルタ―ガイストのようで怖い。

 

自宅に戻り急いで調べてみると、飛行機の後方で発生した乱気流の音だとわかった。

 

「おぉ」。

 

これまた驚きだ。
 

飛行機をひとしきり観察した後は、岸壁に寄りかかり海面をぼんやりと眺めた。

 

夕方の海風心地よい。
 

しばらくすると、老年の方に声をかけられた。

 

「今日は大潮ですね」。

 

言われてみれば、海面の高さが壁越しに自分の立ち位置と同じところにある。

 

本当にただぼんやりとしていただけではないか……。
 

「夏休みですよね。私にも、あの子たちのような時期があったんですよね」。

 

その方は、五十メートルくらい離れたところで釣りをしている親子をみながら、そうささやいた。
 

「昔は今みたいに物がなかったけれども、いろいろ楽しく遊びましたよ。波乗りは廃材の板でするんです。喉が渇くと畑に行ってスイカ泥棒をしたこともありました。すごく叱られてね。両親が線香花火を買ってきてくれたときは嬉しかったな。なつかしいな」。
 

優しい表情でそんなことを話してくれた。

 

とても大切な思い出なのであろう。

 

別れ際、「今は本当に便利になったね。だれでも飛行機に乗って遠くまでいかれるしね」と、遠くを見つめながら静かにつぶやかれた。

 

ちょっと誇らしげな目をされていた。

 

ご老人はどのような気持ちで声をかけてくれたのだろうか。

 

戦後の日本を支えて下さった年代の方にちがいない。

 

だとすれば、幸せそうな家族、立派な建物、便利な乗り物などを前に感じ入るところがあったのかもしれない。

 

そう思うと、とても温かい気持になってきた。



お釈迦さまの御教えに以下のお言葉がございます。
 

『欠けている足りないものは音をたてるが、満ち足りたものは全く静かである。愚者は半ば水を盛った水瓶のようであり、賢者は水の満ちた湖のようである』

 

【岩波文庫 ブッダのことば 中村元先生訳P155】

 

ありがとうございました。