学園太平記 ~義助の出陣編~ | 犬小屋チャンプルー

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犬己那池の、オリジナルの小話やイラストをもさもさ更新するブログ。
最近は、歴史創作(南北朝~戦国時代)がメインになっています。

※注意※

この話はフィクションです。

歴史創作・パロディが苦手な方は、撤退してください。






それでも大丈夫な方のみ、以下からどうぞ。↓






校長室から退出した義助は、新田組が待機している空き教室に入った。


「皆。北畠教頭からお褒めの言葉をいただいた上に、四条先生から煮物をいただいたよ」


「おおーっ!」


義助の報告と鍋の中身に、社員たちが歓声を上げる。

彼らもまた、連戦で疲れ、腹をすかせているのだ。

家庭科室から食器を借りてくると、貪るように食べ始める。

隆資が作った煮物は、上品な味わいでおいしい。

さすが家庭科教師だ。

そんな中、義助だけは箸が進まなかった。

熱のせいで食欲がない、というのもある。

だがそれ以上に、兄の行方が気がかりで、食べ物が喉を通らないのだ。


『2年の脇屋義助君。至急、職員室まで来てください』


唐突に響き渡る校内放送。

義助は食べ残した皿を置いて、貞満とともに職員室に向かった。


「失礼します」


「来たか。これを見るのじゃ」


入室して早々、親房からテレビの画面を指し示される。

どうやら、臨時のニュース番組のようだ。

もしかして、義貞の行方がわかったのだろうか?

淡い期待を抱いて画面を覗きこんだ義助だったが、それは見事に裏切られた。


「足利尊氏!」


画面に映っているのは、最愛の兄ではなく、憎き敵の姿だった。

マイクを握った尊氏は、まっすぐカメラを見つめて発言する。

まるで、画面越しに義助に呼びかけるように。


『――突然ですが、南校の脇屋義助君に話したいことがあります。小学校の裏山で待っているので、来てください。以上、足利尊氏でした』


そう言って、尊氏がお辞儀をしたところで、画面が切り替わった。


「一体どこの局じゃ。奴が逆賊だと知って放送しておるのか!?」


「許せん!」と怒り狂う親房を、周りの教師たちが宥める。


「義助坊ちゃま、これは罠です。行ってはなりません」


一歩下がった所から見ていた貞満が、静かに忠告する。

確かに、義貞も尊氏に裏山に呼ばれてから消息を絶った。

警戒するのは当然である。

しかし、義助は首を横に振った。


「――いや、僕は行く」


その声に、親房や彼を宥めていた教師たちが、一斉に振り向いた。

驚きの視線を浴びても、義助の意志は変わらない。

突然の敵からの要求。

尊氏は自分と何を話すつもりなのか?

だが、何を話そうと結果は同じだ。


「罠でも何でもいい。行って、尊氏をぶっ潰してきます」


体中が燃えるように熱いのは、熱のせいではない。

ただ、あふれ出る尊氏への憎悪ゆえだった。


   ***


尊氏からの要求と、義助の出陣。

史実では、南朝に寝返った武将の要請に応じて、義助が伊予に下向しました。

はたして、尊氏の目的とは……?


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