2回目の入院直後は最初の入院当初より状態が悪く、腹部のみならず全身が痛くて身動きも取りにくい状況であったが、今回は抗生剤が良く効いたのか1週間ほどで体調はかなり良くなった。
そんなある日、院長に話があると妻と一緒に呼び出された。
院長は2回目に私が入院した直後の血液検査の結果表のある部分を指してこう切り出した。
「ここと、ここの所を見てください。微量にプラスの反応が出てるでしょう?これは骨髄の中で血液が出来る過程で、血液になる前の物質が外に漏れ出ている、という疑いがあるんですよ」
「はぁ…」
「これは、何か血液の病気の可能性が疑われます、詳しく調べるには骨髄を調べる必要があるんですが、ここにはその専門の先生がいません」
「はぁ…それで?」
「S病院には今その先生がいらっしゃるという事なんで、S病院に行って精密な検査をした方がよろしいかと思います」
私たちは突然降って湧いたような話に戸惑った。
「じゃあ、この憩室炎はどうなるんですか?その血液の検査はその前にしないといけないものなんですか?」
「手術するとしても来年の事になりますから、それまで時間がありますし、その間にその血液の検査をしておいた方がよろしいと思います」
私たちはまるで狐につままれた気分だった。
一体その「血液の病気」とは一体何なのだ?
今、S病院に転院してまで調べないといけないくらい、深刻かつ急を要するものなのか?
それとも体のいい厄介払い、たらいまわしなのか?
しかしS病院と言えど地域の中核病院であり、決してここK病院の下請けのような病院ではない、まして公立病院であって新型コロナ患者も受け入れているから、今大変でここよりも病床に余裕はない筈なのだ。
それなのにここK病院からよくわからない状態の患者を「はいそうですか」と受け入れるだろうか?
わからない…
しかし、院長の話しぶりからもうその方針が変わることはなさそうだ。
そしてわずか3、4日でS病院への転院が決まった。向こうが受け入れてくれると言うのだ。
前は2週間かけてもすべての病院に断られたというのに皮肉なものではないか。
勿論転院の目的が違うというのはあるが…
「いきますよ!1、2、3で引き抜きます、3の時に最も痛いですから、どこかにつかまってグッと力を入れておいてくださいね!」
「それでは、イチ、ニノ…サン!」
「ぐあああぁぁぁぁ~っ!」
もういやだ!もう痛いのはごめんだ~!
「お、終わりました?」
「あ、あとちょっと… もうそんなに痛くないですから」
まだあるんかい!
「もう終わりましたよ~、おつかれさまでした~」
やっと終わってテープを張ってもらって終了した。
「先生もお疲れさまでした…」
そういうのがやっとだったけど、こんな仕事絶対出来んわ。
そんなこと言ったら脳外科とか心臓外科とか、一つ間違えたら患者が死んじゃうんだもの大変な仕事だよな~。
上手くいって当たり前で、失敗したら医療ミスとかで訴えられかねないんだから。
私らなんか少々カット失敗しても1か月したら伸びるし(笑)医者に比べたら気楽な仕事かもしれんなぁ~。
午後からは造影剤を入れてのCT検査。これは痛くない(笑)
あ~、もう痛い検査や治療は終わったと思ったら、次の日には眼科で眼に注射された!(笑)
K病院の眼科を引き継いでこちらでも診てもらえることになったんだけど、持病の「サルコイドーシス」から来る「ぶどう膜炎」のせいで虹彩と水晶体の癒着が起きていて、それを引っぺがすのに必要らしい。
これも結構怖かった…。
なんかここんところ怖い経験ばかりしてるような気がする…。
気付けばもう12月23日、テレビを見ていると世間はクリスマス一色だ。うちの下の娘もまだ小学校4年生。家族でクリスマスを祝ったり、プレゼントをもらったりするのがまだまだ嬉しくて楽しみな年頃なのに、そんなときに家族や子供と一緒にいてあげられない。
なんでこんなことになってしまったんだろう?
なんで自分はこんなところにこんなに長くいるんだろう?
そう思うと悔しくて、悲しくて、そしてこの2か月弱の苦しさがこみあげてきて涙が溢れてきてしまった…。
タイミング悪く、看護師が入って来て「早く良くなって帰ろうね」と言われると余計に悲しくなって…
あぁ…まだはっきりとした光は見えないけど、私を待っていてくれる人たち、そして自分自身のために気持ちだけはしっかり持ち続けようと思う。
つづく