さて、「igG4関連疾患ミクリッツ病」という聞き慣れない病気から眼の炎症を起こして8日間の入院の後、仕事復帰した私である。
本来ならステロイドで身体の抵抗力が落ちているため、身体が戻るまで観察入院が必要だそうなのだが、店をそんなに休むわけにもいかないので丁度1週間での退院を許可してもらったのだ。
退院後の片付けが終わってから早速マグナにまたがって五色台まで。
約2週間乗ってなかったから下手になってないか心配。
この間大型2輪の教習も当然お休みしている。
普通2輪の時も肋骨骨折で休まざるを得なかったが、こういう星のもとに生まれてきたのかしらん?(笑)
五色台の山の上の「秘密の練習場」で入院中Youtubeで学んだ小旋回を繰り返し練習する。
これができれば8の字やクランクもわけないはずである。
「よし!大丈夫!」
最初こそ違和感があったが、次第に感覚が戻ってきたのかほぼ思うようにバイクを操ることができている。
五色台から帰ったがまだ物足らず、青の山にも足を延ばす。
ここの山道は五色台よりグッと狭くタイトで、最後山頂に向かう途中「難所」が存在する。
私は以前からこの「難所」をどう通過できるかで自分の運転技術のバロメーターにしてきた。
最初の頃は一気に通過できず、止まって切り返しが必要なほどであったが、最近では一速でゆっくりUターンするような感じで通行出来ていた。
「さぁ!今日はどうだ!」
「そうさ!俺は今大型免許に挑戦してるんだ!以前とは違うのだよ!」
入院明けの解放感と久しぶりにバイクで高揚した心はいつしか「慢心」へと変わっていた…
いよいよあの「難所」だ。
いつもなら1速まで落としてゆっくりコーナーに入るのだが、行けるだろうと横着して2速のままコーナーに入る。
思ったよりコーナーがきつい!
「いかん!」
ここはほぼUターン状のコーナーなのだが、それに加えて勾配も結構ある!
と!
失速!
そして、虚しい空ぶかしを響かせながらマグナは左に倒れた…
「嘘だろ…」
教習所で鍛えた「回転立ちごけ」を誰もいない山道で披露することのになろうとは…
「転んだ…」
私は山道に横たわるマグナを呆然と見るしかなかった。
「起こさねば!」
寂しい山道と言えど、時たま山頂に上り下りする車はある。
山道の真ん中で倒れたマグナをどかさねば迷惑になる。
後日GNで再現しようと訪れたが人がいたので止めた(笑)
立ちごけの写真を撮ってないなんて私もブロガーとしてまだまだなのだ(笑)
しかし、これは今までと状況が違う。
まぁまぁの傾斜に、タンクを谷側に、タイヤを山側に向けて倒れている。
平地でも大変なのに、より厳しい状況ではないか!
そして、厳然たる事実!
私はこれまで3度マグナを倒しているのだが、一度も一人で起こしたことはないのだ!
最初は「四国カルスト」 起こそうとするも荷物の重さと、側溝にタイヤを落とすのが怖くて助けを頼んだ。
2度目、近くのホームセンターの駐車場。起こそうともがいていると我がJinkhairのお客様が駆けつけてきてくれて助けてもらった。
3度目、「四国自動車博物館」の駐車場。今度こそ自分で起こそうと準備をしていたら、職員さんが気が付いて、助けてもらった。
そういう訳で私は一度もマグナを自分で引き起こしていないのである。
今回はどうだ?
助けは期待できそうにない。状況は困難ではあるが、ここは自分一人で引き起こさなくては話にならない。
と、その時!
「こんにちわ~!大丈夫ですか~?」
ハイカーであろうか、たまたま山道を歩いて登ってきた40代くらいの男性がにこやかに声をかけてきてくれたのだ。
「はーい!大丈夫でーす!」
私は咄嗟に答えて男性を見送った。
感じの良い人だった。
頼めば二つ返事で手伝ってくれただろう。
しかし、ここは一人で上げると決めたんだ!
普通より厳しいことはわかってる。
しかし、ここで184㌔のマグナを上げれなくてどうして大型2輪の免許を取るなどと堂々といえようか?
早速引き起こしの準備に取り掛かる。
起こそうとしたとき前輪が回ってうまく引き起こせないことがあったので用意していた太いゴムバンドをツールバッグから取り出し、フロントブレーキレバーを固定する。
さて!どうやって起こそうか?
教習所で教わる引き起こしの方法は腕で持ち上げようとせず、膝を地面とバイクの間に入れて「クラウチングスタート」のような体勢から押すようにして起こす方法だ。
しかし、これは教習車に巨大なエンジンガードが装着されているから可能なのであって、私のマグナには当然そのようなものは着いておらず、ペチャンと横倒しになっている。
ここはとにかく少しづつでも持ち上げて、そこに膝を入れて行く方法しかなかろう。
ハンドルを持ち、力いっぱい持ち上げる。
「重い!」
こちら側に傾斜しているおかげでより重さを感じる。
何とか少し持ち上がった!
あ!ウィンドスクリーンとグリップカバーが割れている!
カバーはまだいいが、スクリーンは四国自動車博物館でも割って交換したやつなのに!
13000円もするのに!
などとまごまごしていたら、膝を入れ損ねて、また落としてしまった。
左のグリップエンドがグリグリと地面に擦れる。
あぁ、そこも傷だらけだろうな…
でもどうしようもない。
さぁ!もう一度!
持ち上げて膝を入れる!
何とか!なんとか!腰で支えることができた!
あともうちょっとだ!
あとは、あとはスタンドを立てればオーケーだ!
し、しかし、スタンドを立てようとどちらかの足を上げると踏ん張りが効かない。
「あぁ!ダメだ~!」
力尽きて、ズルズルとバイクが膝から滑り落ちて、またマグナは横倒し。
あぁ!せっかく苦労してあそこまで上げたのに、元の木阿弥じゃないか!
バイクは立っている時は思い通りに動かせるが、ひとたび倒れてしまうと、どうしようもない重い鉄の塊になってしまう。
「はぁ…!はぁ…!」
ものすごく息が上がっている。
これはちょっと休まないと…
ヘルメットを脱ぎ、しばらく呼吸を整える。
幸い下から上がってる車も、頂上から下ってくる車も来ない。
よし!
もう一回やるか!
さっきあそこまで上げられたんだから行けるはずだ!
意を決してハンドルを思い切り持ち上げ、持ち上がったら腰を当てて少しずつ起こしてゆく。
バランスを崩さぬように気を付けて…
よし、もうほぼ大丈夫なくらい上がった!
あとはスタンドを立てるだけだ!
「ぐおおおおおぉぉぉ~っ!」
スタンドに右足が…
と、届いたっ!
「ふう~!」
やっと起こせた…
あぁ!クラッチレバーも曲がっている!
前に四国カルストでやった時よりはまだましだが…
仕方ない、怪我もないし…
あ!ウインカーも割れてる!
今日はもう帰ろう…
今回の転倒の被害は…
クラッチレバー
ウインカー
ウインドスクリーン
ハンドルカバー
あと少々の傷
&
慢心
しかし、
しかし!
今日初めて私はこのマグナを起こせたのだ!
それも傾斜のある悪条件で!
これは収穫だ!
そうさ!
ただでは起きない!(笑)
さぁ!明日は大型バイク教習を再開させる!