平成年30年
11月8日晴れ 朝食後、一昨日にひどい宿に泊まったと若主人に話したら、「あ〜あ、あそこに泊まったのですか?」と笑った。宿の名前は言わなくても、お遍路さんや遍路宿の中では、周知の宿だった。逆打ちのお遍路さんには伝えるけれど、順打ちのお遍路さんには伝えようがないとも言った。外に出ると、本当に目の前に浄瑠璃寺があった。参道入口の左に、正岡子規の『永き日や 衛門三郎浄瑠理(璃)寺』の句碑があった。句碑は、読めないくらい削れていたが、横にはっきりと書いた木柱が立てられている。早朝は静かで気持ちが良い。今月7日と8日は、2人の伯父の祥月命日でもあるので、静かに鐘を突いた。境内には、おかけ下さいと『説法石』があった。お釈迦様が説法された、インド霊鷲山の石が埋め込まれていると説明文があった。20番鶴林寺の山号の霊鷲山は、インドの山の事かと思った。『佛の足跡』とか『仏手花判』という、仏の指紋だという石も置かれていた。他の霊場にはない不思議な境内だ。ゆっくりお参りをして、納経所に行ったら住職夫人と思われる方が、とても丁寧に対応してくれた。「境内は気持ち良いお寺ですね。」と言うと、笑顔で納経してくれた。北海道には、観光で来たことがあるそうだ。47番八坂寺は、田園の緩やかな道を1キロもないところにあった。役行者が開基だと伝わるので、1,300年の歴史がある由緒あるお寺だ。『地獄の途』『極楽の途』という面白い小さなトンネルの中に、それぞれ地獄極楽の絵が描かれているのでくぐった。真っ暗な本堂の地下には、びっしりと全国の信者から奉納された阿弥陀様が、『万躰阿弥陀仏』として安置されていた。続いて、5キロ弱先にある48番西林寺を目指した。46番から51番まで距離もなく、今日は余裕でお参りが出来ると思っていた。道路沿いに、『四国霊場遍路大先達衛門三郎札始大師堂左参道』の看板が見えた。ここは、焼山寺を下った先にある『杖杉庵』で見た、お大師さんに詫びている衛門三郎のゆかりの地なので、番外札所にもなっている。お遍路をする前から、ここは是非参拝をしたいと思っていたので、立ち寄りお参り出来て良かった。小さなお堂に納札箱があり、きれいにお祀りされていたが、納経所は見当たらなかった。参拝後、西林寺に向かったが、どこでどう間違ったのか道を間違えてしまった。左に行けば10数分で着くところを、右に曲がってしまい、まったく別の道を歩き、霊場でない同じ名前の西林寺に行ってしまった。境内の様子が違うので、停まっていた車に訊ねたら、札所の西林寺は6〜7分のところだと教えてくれた。実は車での所要時間が6〜7分との事なので、何と往復15キロの道を間違って歩いてしまった。以前読んだ本にも、同じ間違いをしたお遍路さんの話が載っていたが、私も同じ失敗をしてしまった。油断した訳ではないけれど、あの宿の不平を言ったので、ばちが当たったのかなと、戻りながら苦笑した。十善戒に不悪口とあるのにと、自分でも可笑しかった。西林寺へは、すれ違う人に何度も聞きながら歩いた。調剤薬局にも入って受付で訊ねたら、薬剤師が笑顔で道路に出て、丁寧に教えてくれた。やっと到着した西林寺の本堂に、50代くらいに見える女性がいた。金髪を背中まで垂らした外国人女性で、般若心経を唱え英語でも呟いていた。「スピリチュアル」とか「マインド」とかの単語は聞き取れたが、何をお祈りしているのだろうかと思った。般若心経は、目をつぶって聞けば、日本人のように聞こえる。一人で歩き遍路をしているようだった。西林寺の納経所には穏やかなおばあさんがいて、娘さんかお嫁さんらしい女性と二人で、丁寧に対応してくれた。49番浄土寺へも、また違う方向に向かって歩いてしまった。途中、婦人に浄土寺への道を訊ねたら、まったく反対だといわれた。どうも今日の方向感覚はおかしい。西林寺まで数キロ戻り、標識を注意深く確認しながら、久米小学校前を通り越した。三叉路で地図を見ていたら、乗用車が停まった。「どこへ行きたいんだ?」と聞かれ、「浄土寺です。」と返事をしたら、「乗れ!送ってやる。」と言ってくれた。歩きたいのでとお断りしたら、この先の信号を右に行けば良いと去って行った。お遍路さんは、道中みんなに見守られているのだなと感じた。浄土寺にも正岡子規の句碑があるというが、見逃してしまった。写真で良く見る有名な、空也上人像が安置されているらしい。空也上人像は、奈良の六波羅蜜寺だけだと思っていたが、ここにもあった。非公開なので見られないのが残念だが、口から阿弥陀仏6体が出ている強烈なインパクトがある像だ。浄土寺の納経所で、50番繁多寺への道順を教えてもらった。2キロ弱なので、何とか納経時間までに間に合うかなと先を急いだ。道標を見落とさないように注意して歩き、時間内に間に合いひと安心した。参拝を終えて納経所に行くと、先ほど西林寺で見かけた金髪の女性がいた。「般若心経が上手ですね。」と言ったら、納経所の女性もニコッとした。薄暗くなってきたが、51番石手寺に向かった。5時までの納経時間には間に合わないが、門前まで歩いておきたかった。今日はゆっくり歩いて、石手寺まで納経する予定だったが、道を間違えて3時間以上ロスしてしまった。歩けばこんな事もあるさと、以外にがっかりしなかった。石手寺に着いたが、辺りが暗くなりバス停を見付けられず、石手寺前のファミリーマートでタクシーを呼んでもらった。宿泊先は、松山駅に近い『ホテルクラウンヒルズ松山』だ。四万十市で宿泊した際、紹介してもらったチェーンのホテルで、素泊まりで予約していた。大浴場があり、夕食のカレーライスが、数量限定ながら無料なのも好印象だった。大浴場に気持ち良く入った。カレーが終了していたので、近くの飲食店に行って、名物の鯛めしを食べた。隣の菓子店で、坊っちゃん団子とマドンナ団子も買ってみた。色が違うだけで、同じ味だった。
46番浄瑠璃寺
句碑/正岡子規
浄瑠璃寺/本堂
説法石
インド霊鷲山の石を埋め込んだ石のベンチ
インド霊鷲山の石
佛の足跡
佛手花判/佛の指紋
樹齢千年!
籾大師
道標
47番八坂寺
地獄の途
極楽の途
標石
衛門三郎札始大師堂
札始大師堂
札始大師堂内
間違って行った同じ名前の西林寺
48番西林寺
西林寺/本堂
西林寺/大師堂
標石
49番浄土寺
お大師さん
標石
道標
50番繁多寺
繁多寺/大師堂
坊っちゃん団子&マドンナ団子





































































































