今期18冊目。
貧困・発展途上国の類で購入した本。
結論、素晴らしい本でした。
ルーマニア、もっと言えばヨーロッパの光と闇を映し出したルポルタージュ。
前半概要、後半所感。
ルーマニアはかつて社会主義国家であった。
ソビエト連邦に占領されていて、東側の国として世界に位置していた。
元々、貧困とは言わずとも決して豊かではなかった国だったのが、独裁者チャウシェスクが政権を握ってからはさらに国が貧しくなっていく。
中央への富・権力の集中によって、民衆の生活レベルが低下していったこと以上に、数々の政策面での失策があると言われている。
特に、現代で悪策だと非難を浴びているのが、一人っ子政策とは対照的な多産化政策。
「国力は人口なり」を信条として避妊具の使用禁止や3?4?人の子を出産するまでは中絶を禁止することを法律とした。
この結果、爆発的に人口は増えていったものの、貧しい人々も子供を産んだものだから、
育てられる経済力が無いがために、経済孤児が社会的問題となっていった。
ルーマニア革命が起こり、資本主義国家へ変貌すると事態はさらに悪化する。
特に初めの何年かは移行がうまく進めず、逆に経済を停滞させてしまった。
さらに資本主義になるものだから、今までの平等性が無くなり、全体が貧しい中でさらに貧富の差が拡大。
孤児が一層増加することになる。
ここで問題なのは、貧困問題だけでなく差別問題。
ルーマニアには、ロマ人と呼ばれる北インドから流れてきた民族がいるのだが、
ロマは元来盗みを働く傾向にあり、肌が浅黒い事から差別されてきた。
貧困と差別の二層攻撃により、孤児院に収容されてもイジメが絶えず、
命からがら抜け出してきた人々はマンホールを生活の住処としていった。
しかし、そのマンホールでの生活は非人間的な空間であり、闇の世界。
鼠や蠅があちこちにいて、糞尿による異臭も放っている。
そんな空間で生活している事に日本人としては驚きを隠せないのだが、
マンホールしか彼らが生きていく住処が無いのである。
劣悪なマンホールの生活環境で、外は差別が蔓延り当然に様に人々からは罵声や暴力が振るわれる。
そんな陰惨な生活に耐えられず、マンホール生活者はシンナーに頼り、現実の世界からの逃避を図る。
しかし、シンナーがさらに彼らの評判を下げ、差別意識を醸成させ、光と闇の格差は拡がる一方である。
本書はルーマニアの歴史や文化、マンホール生活者たちとのかかわりを元に、
今の歪なルーマニア社会を鋭く切り込んでいる。
同じ人間なのに、生まれた境遇が違うだけでなぜこうも人生が規定されてしまうのか。
ロマ人も全く同じ普通の人間であり、彼らの人間性は本書を通じて良く伝わってきた。
そんな彼らに親しみを感じる一方で、いまだに根強い差別意識を持つルーマニア人に強い嫌悪感や怒りを覚えた。
最後の話などは酷過ぎて、ルーマニア人の人間性の低さに反吐が出る。
世界は少しずつ平等な方向に向かっていると思っていたのだけれども、
まだまだ絶対的な格差は存在していて、今の自分たちが生きている世界の裏側には惨めで苦しさを感じながら生きている人たちが数多くいることを無視してはならない。
今の自分が生かされている事に感謝をすると同時に、そんなおかしな社会を少しでも良い方向に進めるためにこそ、自分の命を使っていきたい、と改めて思う。