高校サッカー今思う 選手権は魔物だった | 少年サッカーよもやま話し

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とある少年サッカーチームに属するコーチの体験談。
いい意味でも悪い意味でも少年サッカーにおけるよもや話しをしていきます。

息子が高校を卒業し、これまでの総括と感想をと思い、一時的に筆を取りました。


選手権予選で敗退し、選手のダメージは思いの他大きいものでした。

それがわかったのが、卒業式後に開催された卒業生を送る卒団式での事です。


卒業生が舞台に上がり、1人ずつ別れの一言をスピーチしている時でした。

ほとんどの卒業生が、選手権で敗戦した、全国へ行く事が出来なかった事を振り返り、後悔や自責の念に駆られて苦しんだ思いを口々に語っていました。

あの時のワンプレー、こうしておけば良かった、ああすれば良かった、悔しくて眠れない日が続いた、等々、勝利の喜びの思いより、選手権で全国へ行けず敗戦した事での出来事を、みんな泣きじゃくりながら語るのです。


全選手が目指した舞台、みんな幼い時からサッカーをしてきて、地元じゃ敗け知らずのエース格が、どの選手も自信満々で入学して来て、このメンバーなら絶対全国へ行けるという希望を持っていながら、選手権という壁を越える事が出来なかった。

選手権が終わり、約半数の選手がサッカーを引退しました。

完全な燃え尽き症候群。


サッカーを辞めて違う道へ進む者、就職する者、サッカーが怖くなって辞める者。

みんな、幼い頃からサッカーが大好きで、サッカーでは誰にも負けない自信家で、地元じゃエース級でならして来た強者で、サッカーが楽しくて仕方のなかった彼らが、サッカーで苦しみ続けたのです。

私は高校サッカー選手権は魔物だと思いました。

選手権とはこれほどなのか、これほどまでに彼らを食い尽くすのか。

サッカー少年から、サッカー愛を奪う魔物だと。


私の息子でさえ、スピーチで涙ぐみながらこう語りました。

「選手権予選での最後のあの失点が、今でもずっと夢に出てきます。今日まであの出来事を忘れる事が出来ません、ずっと悪夢として頭から消えてくれません。

あの時、あとほんの少し早く反応していれば、あと1センチ、1センチで足がボールに届いていた、ブロック出来た、失点を防げたはずです。

失点を防げなかった自分の責任です。みんなを全国へ連れて行くと約束したのに果たせなかった。エースナンバーを持つ資格なしです。力不足でした。すみません。

下級生のみんなはこんな後悔しないでください。

僕たちの分まで全国へ行って欲しいです」

と泣きながら話した。


息子のプレーはテレビのスポーツニュースで映像が流れていた。

試合はそれまで、無失点で抑えていたディフェンスライン。

CBとして先発出場していた息子は、ほぼパーフェクトに抑えていたが、相手チームのショートカウンターで失点してしまった。

映像で見ると、相手チームのFW選手が放ったシュートを息子はスライディングタックルでブロックしようとしたが、ほんのつま先にかするかどうかでボールはゴールに吸い込まれて行った。


ほんのあと少し、しかしこれが全国へ行く者と行けない者の大きな差になるのだろう。

だからこそ悔しいし無念。

あれだけ好きなサッカーなのに、失点シーンの悪夢を見続ける位トラウマになるなんて。

それだけ高校サッカー選手権にかける思いは別格だった。


私も今年度の高校サッカー、息子がサッカーを始めて以来初めて、大会をテレビで見れなかった。

雑誌も買えなかった。

インターネットでも高校サッカー関連を見る事が出来なかった。

しばらくサッカーに関われなかった。

親の私もダメージを負っていた。


息子は大学でサッカーを続ける。

大学4年間で指導者になる目標とプロになる夢を持ちながら。

すでに息子を含めて数名の新1回生は大学の練習に参加していて、大学のTMでは早速トップチームに帯同させて貰えている。

新1回生でトップチームに帯同させてもらえるのは大変有り難い。

私も息子を見習い、早く吹っ切らなければ。


ただね、出来る事なら、望みが叶うなら、あともう1年だけ息子の高校サッカーを見れたらなぁ。