著者 柳美里
2014年刊行の本です
アメリカの権威ある全米図書賞(翻訳部門)を受賞したことから、今また、人気になっています
ところで、上野といえば
私は、高校の時、修学旅行で、国立西洋美術館へ行ったことがあります
その後、家族でパンダを見に行きたいと思っていたら、東京に住む友人が、「上野は、今、(外国人が多くて)危ないよ」と忠告され、断念しました
上野についての私の思い出は、ほんのそれだけです
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上野駅は、東北から出稼ぎに来た人々が、最初に降り立つ駅
この小説では
福島出身の一人の男の壮絶な人生が描かれます
不器用で哀れな人生です
彼は、仕事には慣れても、喜びも悲しみも含めて、人生に慣れない男なのです
彼の人生を通して、日本の戦後が見えてきます
光と影の対比が見えてきます
感動と熱狂の裏側を突き付けられます
上野恩賜公園の切なさ、陰鬱、湿り気と匂いなどを感じます
彼の働きづめの人生、家族の不遇、故郷の貧しさに、胸が詰まりました
柳美里さんの丁寧な取材に基づくホームレスの実態も知りました
見て見ぬふりをされるホームレスの人々
日本の経済成長の陰に追いやられて、見捨てられて、隠される人々
どうにもならない格差社会
日本社会のひずみは、昔も、コロナ禍の今も、ちっとも変わらないのねと思うと、心はず〜んと重くなりました
主人公の過去現在未来への思いが交錯して、少々読みにくさはありました