今さらですが、ここの執筆陣は、金沢競馬のレース実況を担当している実況アナウンサーです。各週の金沢レース実況を担当した者が、ここの執筆も担当するシステムです。
というわけで、たとえば騎手のみなさんや調教師さんにお話をうかがったりするのは、レースとレースの合間や、レース開始前、場合によっては最終レース後に時間をいただいて、ということになります。
何が言いたいかといいますと、今回ご紹介する中川雅之調教師の談話は、20日(日曜日)の、とあるレース出走馬の本馬場入場後(われわれ、本馬場入場の際の出走馬紹介放送もしております)から、そのレースの発売締め切りベルまでの、ほんの5分ほどの間にうかがったものです。わたくしが調教師控室まで移動し、実況席にもどる時間もこれには含まれます。ということです。
つまりそれで何がどうなのか、っつうと…というのは、中川調教師の談話をご紹介したあとで。
~以下、中川雅之調教師談話~
「ライブザドリームは、中央入厩未出走でウチの厩舎に来たんですが、ちょっと見た感じ、体質弱いんかなあと思いつつ乗ってみたら、ああやっぱり弱いなあと。たまたまご縁で鈴木くんに乗ってもらって、徐々に徐々に鍛えてここまで来たんで。
途中2・3回、中だるみはありましたけど、この馬のことはもうちょっと走ってもええなあとは思ってました。
レース行って馬が変わるっていうか、そういう点はセンスのある馬だなと。
日ごろよりは、うんとレースに行って気が入るというか。日ごろはなんぼかトビも硬いし、でも追い切りで速いところ行ったり、あとレースで走るとトビが大きくなる。ああいう身体の大きい、ガサもあるけどね、500キロあるけど、はじめは500キロのわりにはトビが小さいなと思ってたんですけど、いざ気が入るとトビが大きくなるというか、つまり本番になったら気がかわって、チェンジするというかね。
競走馬としていい方やわね、そういうのは。逆の馬もあるもんやから(笑)。攻め馬ばっかよくて、レースになったらタランとしとるやつもおるし。
前の重賞(MRO金賞)のときはレース上がりちょっとケガしてかえってきたんです。結局相手が強い、はじめて一番上の連中と当たったということと、ケガといろんなことがあったんで、それで馬の走りにも影響したんじゃないかと。イヤ気さしたちゅうか、それでシンガリ負けだったんですけど。
そのあと外傷のハレもひかせるのに時間かかるじゃないですか、ひと開催休ませて、キレイになったとこをまた使いだしたんですけど。人間でもね、ケガするとはれることあるじゃないですか。そのハレがひくまでじっくり待って、また使いだしたら、着・着きたんで、その前々回のレース(加賀友禅賞)で4着きたときに、1300メートルのわりにはしぶいレースしたなと思ってたんで、これなら次のレースはいいかなあと思ってたら味な競馬してくれたんで、サラブレッド大賞典も内心はやっぱりそこそこはくるんじゃないかなという期待感はあったもんですから、結果的にそれが最高のカタチで出てくれたちゅうことはありがたいなと思ってます。
ここまで下の方から勝ち上がるのに前に行ってますけど、出てから一瞬のダッシュがないもんやから、その点考えたら、距離長いほうがいいんじゃないのかなあと思ったりはしますけどね。
短いとこは出てからダッと行かないと。そういう馬やったらいいでしょうけど、この馬は出てからちょっと行かないもんやから、その点考えたら長いほうが。これまでなんでそれでもよかったかっていうと、相手が弱かったから。だんだん強くなると、出てからスッとついていかれへんと出負けしてしまうので、その点長い距離だとみんなもゆっくり行くし、現時点では、長いほうがいいんじゃないかと思いますね。
どこからでも行けるんで、今となったら。
日ごろホントにトロっとしてることもあれば、気が入ると急に変わるんで、それがこの馬にとってはセールスポイントじゃないかなと。それがいい方に出てるというか。
アイナについては、ダッシュがイマイチなんですけど、それでも今回葛山くんに代打で乗っていただいて、道中、ボクがイメージしたとおり乗ってくれたので、ありがたかったかなあと思います。
彼もボクに、『悪かったねえ』とか言ってくれたんですけど、ボクとしたら完璧に乗ってくれたと思うんで、結果負けただけで。レースは一番いいレースしたと思ってます。金沢特有の、今の馬場状態考えて、ずっとインにおってくれたし、動き出してから外に出してくれたんで、彼はボクとしては完璧だったんじゃないかなと。ただ結果的に負けただけで。代打としてはホントに最高の乗り方してたと思うんですけど、うんうんうん。
ライブザドリームは太一くんに任せてるんですけど、アイナはボクが攻め馬つけてるんです。ボクがずっと攻め馬してるんですけど、これも本番に強いんじゃないかなあと思いますね。
攻め馬してると、そこまで変わるような感じしないですけど、やっぱりレース見るとあれだけキレ味使えるってことは、それだけ潜在的な能力を持ってるんでしょうね。
ちょっとあそこからもうひとキレあったら大変なことですけど、だけど前回の重賞、今回の重賞、上がり3ハロンの時計見てると一番ですよ。2000メートルのこないだのレースでも40秒3だったかな、一番はやかったですからね。前でウチのライブザドリームが止まって、そこへ突っ込んできてるんですけど、横にきてまたライブザドリームが伸びてるから、ただライブザドリームが勝っただけで。その前も38秒どんだけやったから、上がりは最速できとるから、逆にいうといい位置につけたらあの足が使えるかっていうとまた難しい問題で。
どっちにしろ両方とも本番で変わるタイプやね」
~中川調教師談話ここまで~
なぜここで終わっているかというと、この瞬間、発売締め切りのベルが鳴ったからです。わたくし大急ぎで実況席へ戻らなくてはなりません。
調教師控室(2F)から実況席(5F)まで、エレベータを使い、そのほかの道のりを走っても1分で着くかどうか…。締め切りベルから発走まで、正味2分。はたして間に合うか!?
間に合いました。
とにかく、20日におこなわれたどのレースも、不自然に途中から実況がはじまる、なんてことはなかったハズです(当たり前)。
まあ、わたしが間に合った件はともかく。
先にも書いたとおり、このお話は5分間足らずの、ごく短い時間のうちに話していただいたものです。どれだけ中川調教師が大急ぎで語ってくださったか、おわかりいただけると思います。
中川先生もたいへんお忙しい中、ようやくつくっていただいた、本当に貴重な時間ではありましたので、こっちも大急ぎ、先生も大急ぎ、でもファンのみなさまにいろいろわかっていただきたい、というので、たいへんな勢いでお話しいただきました。中川雅之先生でなくてはできないことです。いや、ホントに。
短時間でこの分量。もちろん不要な部分や、「あの…」とか「その~」とかいう言葉はほとんどカットしてあります。多少の重複が見られるのは、先生がどれだけたくさん短時間で語ってくださったかをおわかりいただくためにあえて残したものですが、それでも、読んで意味がわかりにくくなってしまう部分はカットしてあります。
カットした中には、
「抽象的な言い方して申しわけないけども、うまいこと書いてね」
とか
「身振りで説明しても、コレ(録音機をさして)じゃワカランよね、ごめんね」
などというこちらを気遣うセリフもふくまれていました。そう考えると、ホントにスゴい。
中川先生、本当にありがとうございました。
また今度、ぜひゆっくりとお話をうかがいたいと思います。本当に。