なぜ“ウェイトをしない天才”が評価されにくいのか | 新・カラダの使い方講座。社交ダンス×4スタンス理論

新・カラダの使い方講座。社交ダンス×4スタンス理論

タイプ別に見る、あなたの身体のクセと活かし方

山本由伸・イチローに見る、資本主義と4スタンス理論の交差点 

● はじめに

山本由伸投手は、雑誌『Tarzan』のインタビューでこう語っています。

「ウェイトトレーニングはやらない。自分の体重で自分を支えるトレーニングを重視したい」

イチロー選手もまた、かつて「筋トレでは動けなくなる」と語っていました。

どちらも結果を出し続けてきた“超一流のアスリート”です。
にもかかわらず、彼らのような「ウェイトをしない成功例」は、
なぜほとんど知られていないのでしょうか。

その背景には、資本主義の構造と、
4スタンス理論が持つ「個体差を尊重する思想」が深く関わっています。


● 「筋トレ=正義」を作ったのは誰か

現代のスポーツ界やフィットネス業界では、
「筋トレこそ正義」「重いものを持ち上げるほど強くなる」という価値観が当たり前になっています。

しかしその裏には、巨大な市場構造があります。

・トレーニング器具
・サプリメント
・スポーツジム
・フィットネスウェア

これらはすべて“筋トレ文化”を前提に成り立つビジネスです。
当然、メディアのスポンサーもこの業界が中心です。
つまり、「ウェイトをしない方がいい」という主張は、
商業的に取り上げにくい構造になっているのです。


● 資本主義の落とし穴 ― 売れるものが正義になる

資本主義の社会では、「売れること」が優先されます。
しかし、「売れる=正しい」ではありません。

ウェイトトレーニングは、成果が“見える”ために評価されやすく、映像にも映えます。
一方、山本投手が行っているような「立ち方」「呼吸」「重心感覚」といった
内的なトレーニングは、目に見えにくく、宣伝効果が乏しいのです。

そのため、
「鍛える=努力」「整える=地味」
という誤解が広がり、人間本来の機能を取り戻すような考え方――
まさに4スタンス理論的な視点が広まりにくくなります。


● 4スタンス理論が「浸透しにくい」理由

4スタンス理論の核は、
「すべての人に同じ正解はない」という前提にあります。

A1・A2・B1・B2、それぞれで立ち方も使い方も違う。
つまり、“万人に効く方法”をひとつの商品として売ることができません。

商業的に考えれば、「これをやればうまくなる」という
単一のメソッドのほうが広まりやすい。
だからこそ、4スタンス理論のように「個性を前提とする理論」は
どうしても広まりにくいのです。


● 筋トレ文化が招く「故障の連鎖」

多くの人が“筋肉で体を支える”ようになりました。
それは、力で固める文化です。

しかし人間の体は本来、骨で支え、呼吸で動くようにできています。
筋肉で固めるほど、呼吸は浅くなり、
体は“息の止まった”状態で動くようになります。

結果として、
・ケガが治らない
・慢性痛が増える
・疲労が抜けない
という現象が、スポーツ界でも一般人の間でも増えているのです。


● 「強くなる」から「整える」へ

山本由伸投手が行っているのは、
「鍛える」ではなく「整える」トレーニングです。

まっすぐ立ち、骨盤と胸郭の向きを整え、呼吸を通す。
それはまさに、4スタンス理論でいう「軸を通す」作業と一致します。

Aタイプは前重心で上昇・伸展傾向。
Bタイプは後重心で下降・収縮傾向。

筋肉で動くのではなく、重心の流れで動く。
これこそが、故障を防ぎ、再現性を高めるための本質です。


● まとめ ― 骨で立ち、呼吸で動く時代へ

山本由伸やイチローが実践しているのは、
“変わったトレーニング”ではありません。
人間本来の使い方に戻る選択です。

その考え方が表に出にくいのは、
筋トレ文化が巨大なビジネスとして成り立ってしまった、
現代社会の構造そのもの。

4スタンス理論が伝えているのは、
まさに「自然な体を取り戻す」ための道筋です。

重いものを持ち上げるより、自分を感じる。
筋力より、重心。
努力より、整合。

これからの時代、求められるのは“強さ”ではなく、調和。
山本由伸投手の姿勢は、その未来を先取りしているのかもしれません。