原因不明の手の水疱と膿疱…
手湿疹or掌蹠膿疱症or汗疱or薬疹orアレルギー性皮膚炎(?)の整体治療
【10診目でほぼ完治した症例の解説です。】
患者Hさん=49才-女性-主婦/会社員の症例
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① Hさんの病歴・・・
患者Hさんは、3か月ほど前に、床にワックス掛けをしたところ、両方の手掌の一部に米粒大の水疱状の発疹(小水疱?)が2~3か所ずつ生じたそうです。最初は「そのうち治るだろう」と放置していたそうですが、次第にそれが少しずつ増え続け、両手掌に10か所以上も生じたそうです、一部の小水疱は黄色く膿み膿疱のようになっていたそうです。そこで皮膚科を受診したところ「汗疱」の診断を受け、保湿性のある塗布薬を処方されたそうです。しかし、その直後から急激に悪化し、発疹は指を含む両手掌の全面に広がって、非常に強い痒みが生じているそうです。
② Hさんの診察
・Hさんは20代の頃にアトピー性皮膚炎になり、その治療を数年以上もされていたそうですが、皮膚科医によると今回の症状はアトピー性皮膚炎あるいは掌蹠膿疱症などでは無く、汗疱との診断だったそうです。
・元々Hさんは、9年ほど前に炊事などで手が荒れるので、ゴム手袋を使用したところ、かえって手荒れが酷くなったそうです(その時は皮膚科などを受診されていませんでした)。そこでゴム手袋の内側に別の布手袋をして炊事をすることで、少し手の荒れはマシになったそうです。今回のワックス掛けについては、そのワックス剤は天然成分で出来ているとの事で、(油断したのか?)手袋をはめずにワックス掛けをしたそうです。
・視診上、左右の手掌と指の掌面は、そのほぼ全面に肌荒れ様のびまん性の発赤が生じ、各所に直径1~2mm大の小水疱が100個以上散在し、また別の部位では2~30個の小水疱が密集し、疱疹のようになっていました。小水疱の一部は破裂して透明の液体を漏出し、痂皮に覆われ、びらん状態でした。また膿が産出されたのか黄色状の膿疱の様になっている部位もあり、その一部は破裂してカサブタに覆われ硬結し、膿痂皮の様な部位が複数ありました。さらに、一部の皮膚には数mmの亀裂が数か所ほど生じ、この部位は非常に痛むそうです。
・特に小水疱の密集している部位は第3~5中手骨間隙部で、左手掌より右手掌の方がかなり広がり、黄色も強く(膿疱?)、かつ硬くなっていました。
・触診上、手掌の各部位の深部で著明な硬結が触れました。その主な部位は「各中手骨頭間部、各中手骨体間部、各中手骨体底間部、手根管部、ギヨン管部、第1、5中手骨底部」また、前腕の掌側コンパートメントおよび橈側コンパートメントに著明な緊満感がありました。手背には特段の所見は無く、視診的にも綺麗な皮膚状態でした。
・数年前からボクシングジムに通っているそうです。
・足の裏に発疹や発赤などの皮膚所見は無いそうです。
➂ 治療目標と整体治療
⑴ 母指主動脈、浅/深掌動脈弓、掌側中手動脈、総/固有掌側指動脈の循環を回復する
⑵ ⑴により、手掌の局所免疫力と上皮細胞の細胞再生力(ターンオーバー)の回復-向上、および酸性皮脂膜の回復を図る
・前腕コンパートメント解放テクニック
・手根管-ギヨン管解放テクニック
・母指球-小指球-手掌解放テクニック
④ 経過と結果・・・
・上記⑴、⑵の目的を達する為に、最初の5~6回は隔日で集中治療をして手掌の局所免疫力と細胞再生力の回復を目的として炎症をしずめ、その後は整体治療をせずに、皮膚上皮細胞の自然な細胞再生周期(ターンオーバー)に任せる「日にち薬」で、様子をみて頂く治療計画を立てました。
・2診目来院時、
手掌のびまん性発赤部分が少し消退した部位がありました。しかし、全体的な搔痒感は非常に強い状態でした。
・4診目来院時、
小水疱や膿疱は1/3程度に消失していました。手指のびまん性発赤もほぼ解消していました。変わりに表皮の深部から、新たな上皮細胞と思われる、薄いピンク色の皮膚面が浮かびつつありました。掻痒感もごく一部に限局するようになり、手の全体的な掻痒感は無くなっていました。
・5診目来院時、
前回までの治癒傾向に歯止めがかかり、逆に小水疱や膿疱が増えつつありました。また、掻痒感もぶり返し、手全体に強い痒みが生じるようになっているそうです。当初の治療計画であれば、今回の5診目で集中治療は一旦中止し、後はターンオーバーを待つ「日にち薬」にする予定でしたが、急遽さらに整体治療を続けることにしました。
・6診目来院時、
前回の悪化傾向はさらに増悪し、結局初診時の最悪の状態とほぼ同一の状態で、100個を超える小水疱(疱疹)に、一部、黄色いカサブタ(膿痂皮)や、数mmの亀裂などがありました。さらに数日前から、左右の上枝と下枝に1~2mm大の赤い発疹がポツポツと点在するようになり、それは日に日に増加し、今では上下肢の全面にかなり多く散在しているそうです。そこで改めて問診すると、次の様な事が分かりました。
1.保湿性の塗布薬にはステロイドが含まれている
2.かゆみ止めの薬として飲み薬を服用している
・そこで、セカンドオピニオンを受けて頂き、改めて精密検査をする事を勧めました。また医師法的には、医師以外の者が投薬に関して意見を述べる事は医師法違反になりますが、しかしあえて「ステロイド剤を含む塗布薬と痒み止めの飲み薬は、中止してはいかがですか」と意見を述べました。
・7診目来院時、
手掌の小水疱と膿疱は少し消退し、痒みの部位も少し減ったそうです。一部、灰白色の瘢痕の様な部位も生じ、また黄色い膿の様なカサブタ部分(膿痂皮)も増えていました。そしてHさんはステロイド性の塗布薬と痒み止めの飲み薬の服用を中止し、別の総合病院(皮膚科)を受診し、検査を受けたそうです。検査結果は後日(☚9診目)ですが、担当医から「汗疱ではないよ、アトピーでもないね、、、」と言われ、現段階では原因不明だったそうです。ただ、今までの薬の服用は全て中止するように言われたそうです。
・8診目来院時、
両手掌の小水疱はかなり消退し(瘢痕的な凹凸部は散在している)、透明な液体を漏出している小水疱はありませでした。痒みのある部位も大幅に減少し、一部の領域では皮膚表面のカサブタ(膿痂皮)が剥がれ、奥から新たな上皮組織が新生されている箇所が複数ありました。前回は上下肢にあった1~2mm大の赤い発疹は消退傾向にありましたが、逆に背部と腹部に、それが少しずつ発症していました。
・9診目来院時、
新たに小水疱は一つも発症していませんでした。残存している古い小水疱は茶色~黒色化し、枯れてきていました。黄色いカサブタ(膿痂皮)はごく一部だけ残り、他の灰白色や黄色のカサブタ(膿痂皮)はほとんど剥がれ、その深部に濃いピンク色の新しい上皮細胞が芽生えてきていました。上下肢の1~2mm大の赤い発疹はほぼ消失し、腹部と背部の発疹もほとんど消失しているそうです。またこの日、先日検査していた結果が出たそうです。それは「血液検査はIgE値が4倍ほど高かったそうですが、特段のアレルゲンは無い」との事でした。さらに「ステロイド塗布薬は手掌の皮膚炎の悪化に関係ない」「痒み止めの飲み薬も、全身性発疹に絶対に関係ない」とも言われたそうです。そして今回の一連の両手掌の皮膚炎の原因は「よく分からない」との事だったそうです。
・10診目来院時、
痒みはほぼ解消し、両手掌に小水疱は一つも無く全て消失し、ごく一部(2~3か所)に小さな亀裂がありますが、灰白色および黄色のカサブタ(膿痂皮)の9割以上は剥がれ、その痕にピンク色の新しい上皮細胞が全面に生じ、(若干、肌荒れ的状況は残るものの)全体的には健常な皮膚の概観が整っていました。また、上下肢や背中/腹部の赤い発疹も全て消失していました。これで手掌の局所免疫力/細胞再生力(ターンオーバー)は元通りに回復したと考え、後は予定通り「日にち薬」として、2~3周期のターンオーバーを待つ事とし、今回の集中治療を終了する事にしました。
・前回の10診目より4週間後に、
緑内障のメンテナンス治療の為に来院された折に(11診目)、両手の状況を確認すると、左手は小指球の根元部分のみにごく軽度の発赤と掻痒感がありました。右手は小指球と2~5中手骨頭付近にかけて軽度の発赤と掻痒感がありましたので、それに対応する整体テクニックを施術すると、ほぼ全て解消しましたので、これで様子をみて頂くこととしました。
⑤ 今回の症例の概説、、、
・Hさんは最初の皮膚科医より汗疱との診断を受けていたそうですが、当院への来院時には、小水疱だけでなく灰白色の瘢痕状の部位や、膿疱と思われる黄色い発疹もみられた事から、その段階では、ヒスタミンが関係する漿液性炎症から繊維素性炎、および好中球が浸潤する化膿性炎症まで進行-混在しているものと推測され、初期(原発疹)の汗疱状態(orアレルギー性皮膚炎?)をこじらせて、手掌の細菌感染症にまで進んでいる続発疹の状態、と思われました。
・汗疱自体は原因不明の疾患ですから、その治療法はなかなか難しいものがありますが、しかし、当院への来院時のHさんの手の状況は、汗疱というよりは細菌感染のオンパレード状態の続発疹的な様相でしたので、とにかく手掌-手指の局所免疫力とバリア機能を復活させる事を、優先的に考えました。それが上記「➂治療目標と整体治療」
⑴ 母指主動脈、浅/深掌動脈弓、掌側中手動脈、総/固有掌側指動脈の循環を回復する
⑵ ⑴により、手掌の局所免疫力と上皮細胞の細胞再生力(ターンオーバー)の回復-向上、および酸性皮脂膜の回復を図る
で、その整体手技として
・前腕コンパートメント解放テクニック
・手根管-ギヨン管解放テクニック
・母指球-小指球-手掌解放テクニック
を施術する事にしました。
・この仮説に基づく整体治療は、当初は上手くいっているように見えました。しかし5診目になって急に悪化傾向に転じ、6診目には元の最悪の状態に戻ってしまいました。そこで改めて問診する事で、Hさんに処方されている塗布薬はステロイド剤で、さらに飲み薬も飲んでいるとの事を知りました。実はこの時まで、ステロイド剤の事と飲み薬の事は聞いていなかったのです。
・以上の事は次の可能性を疑わせます
1. ステロイド剤➡5診目に手掌の小水疱/膿疱の治癒傾向が悪化傾向に転じた原因? (ステロイドによる薬疹or血管収縮、局所免疫力低下、細胞再生力低下、表皮菲薄化)
2. 飲み薬➡6診目に生じた上下肢の全身的な発疹の原因の可能性? (薬疹/薬剤アレルギー)
・これらの可能性は、セカンドオピニオンの担当医に検査して頂きました(6診目来院時)。その検査結果は、9診目来院時にHさんからお聞きしました。その結果は、
◆ステロイド塗布薬は手掌の皮膚炎の悪化に関係ない
◆痒み止めの飲み薬も、全身性発疹に絶対に関係ない
というものでした。
つまり、4診目まで順調に改善傾向にあったHさんの手掌の皮膚炎が、5診目になって突如悪化したのは、そして全身的な発疹が生じたのは、塗布薬や飲み薬の影響ではない、が皮膚科医の意見でした(☚個人的には、初診時にステロイドだけではなく、抗生剤or抗真菌剤性の塗布薬と併用する事が必要であったのでは、思われる)。
・とは言え、やはり上記1.2の可能性/疑いは100%拭いきれなかったので、Hさんと相談の上、やはり塗布薬/飲み薬の服用は中止する事にしました。以上の事から、5診目の悪化要因に関しては、結局よく分からずじまいでした。
・ただこの悪化はは私のミスと思います。やはり薬の内容をこちら側から突っ込んで確認すべきでした。先述の様に、医師法的には薬に関する意見を患者に述べることは出来ませんが、しかしその投薬内容を知る事で、今後の展開をある程度予測する事が可能となり、それを今回のHさんのケースに当てはめれば、ここまで最悪状態になるまでに、もう少し早く、Hさんにセカンドオピニオンを受けて頂くことが出来たのでは、あるいは服薬に関してもっと注意を払えたのでは、と思うからです。
・とは言え、何とか10診目でHさんの両手掌の95%近くは(若干、肌荒れ的状況は残るものの)健常な皮膚組織に置き換わっていたので、これで集中治療を終了することが出来ました。それから後は、Hさん自身の自然治癒力による「日にち薬」によって、元の綺麗な手掌に回復できる状態にまで改善したので、良かったと思います。
・ここで改めて今回のHさんの手掌-手指の発赤および小水疱-膿疱の原因について検討すると、最初のキッカケ(原発疹)は3か月前の「床のワックス掛け」にあったのでは、と思われます。つまりワックス剤による手掌のアレルギー性皮膚炎が発端であった可能性が高いのでは、と思われます(☚ちなみに、天然成分の方がアレルギー反応が生じやすい)。
・そこに原因不明の汗疱が追加され、その二つが合わさって複雑な炎症に発展し、さらには破れた水疱跡から雑菌が侵入して続発疹的に化膿性炎も併発するなど、漿液性炎、繊維素性炎及び化膿性炎が入り乱れた炎症に悪化したのでは、と思われます。
・さらにHさんについて言える特殊な事情があったと思います。それはHさんの手掌の自然治癒力(局所免疫力・細胞再生能力)の低下にあったと思います。それが上記の「ワックスアレルギーと汗疱」に影響したのでは、と思われます。つまり自然治癒力によって自然治癒するどころか、逆に自然治癒力低下が悪化要因になっていたのでは、と考えられます。
・そしてその自然治癒力低下の遠因はHさんの趣味であるボクシングにある、と考えられました。つまりボクシング練習は常に両手を強く握りますが、それには前腕から手掌に位置する筋肉群および腱-腱鞘(深/浅指屈筋、虫様筋、骨間筋、長/短母指屈筋、小指屈筋etc)や靱帯群(深/浅横中手靱帯、屈筋支帯、手掌腱膜etc)などがオーバーユーズ状態となり、やがて緊張・肥厚します。
・それが長期化すると、その間隙を走る血管を圧迫-阻害する事になり、それは手掌などの局所免疫力や細胞再生能力などの自然治癒力が低下することを意味します。言い換えれば、手掌などの自然治癒力回復-増強の為には、手掌や前腕筋肉群および靱帯群の緊張-肥厚の緩和が必要となり、この考えは、先述の様に上記「➂治療目標と整体治療」と合致する事になります。そして結果的には、この治療方針が奏功したと考えていいと思います。
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