AliExpress にラジオ組み立てキットCF210SPを注文しました。ラジオの組み立てキットは子供の頃以来久しぶりです。子供の頃は組み立てるだけでも難しい作業でしたが、今回は、組み立てを楽しんで放送が聞こえたときの喜びを味わった後、まだその先の楽しみもあるということを実践致しました。それは改造でございます。
ラジオ組み立てキットCF210SPの回路図を眺めると、FM受信用IC1(TDA7088)、AM受信用IC2(TA7642)、アンプ用IC3(TDA2822)は常に電源が供給されています。それぞれIC1が3V 5.2mAで15.6mW、IC2が1.3V 0.20mAで0.26mW、IC3が3V 6mAで18mW、LEDが2V 3mAで6mWだとすると合計で39.86mWになります。別の様々な箇所での損失もあるに違いありませんの机上計算では40mWを少し超えると思われます。実測は未だ行ってません。だから乾電池のもちを心配するほどではないとも考えられます。
それから、AM受信中に隣でFM回路が動作している状態及びFM受信中に隣でAM回路が動作している状態というのは、AM回路及びFM回路にとって、明らかにお互い雑音元です。
節電効果及び雑音抑圧効果が得られることを期待して、FM/AM切り替えスイッチを2回路品に交換して、FMモードのときにはIC1にだけ、AMモードの時にはIC2にだけ電源が供給されるように改造することは悪くないなと考えてました。
CF210SPに関係するYouTube動画の新しいのが上がってないかなぁ~と何気なく検索してみたら、同じ考えで、既に実験している先達がいらっしゃいました(動画1)。
動画1 - モードに合わせて電源供給(先達版)
動画1を真似したわけではありませんが、自分なりに、なるべく単純な改造方法を考えていたら結局ほぼ同じ回路になりました(図1)。赤矢印で指す配線を2ヵ所切断して、赤色の配線及び部品(緑色LED,100Ωの抵抗,スイッチ)を追加することで、FMモードのときにはIC1にだけ、AMモードの時にはIC2にだけ電源が供給されるように変わります。
図1 - 改造した回路図
図2 - 改造前のプリント基板パターン面
回路図(図1)で赤矢印で指す配線2ヵ所の切断は、図3で矢印が指すプリントパターンの切断になります。
図3 - パターンカット後のプリント基板パターン面
現在マウントされている1回路2接点スライドスイッチを取り外します。
図4 - 現行のスライドスイッチを取り外す
取り外したスライドスイッチを取替るトグルスイッチと並べて見ました(図5)。
図5 - スライドスイッチとトグルスイッチを並べて見た
もとの回路図にあるS1は、1回路2接点品(1P2T)なので、2回路2接点品(2P2T)に交換するわけですが。先達様が動画1で採用してた2P2Tスイッチは、プリント基板上での高さが5mmを少し超えているようで、同調つまみが納まらなくなってました。
秋月電子通商のホームページで調べてみたら「販売コード102627,型番IS-2235-G」という超小型スライドスイッチ2回路2接点が適合するかもしれません。これならば、現状のプリント基板についている1P2Tスライドスイッチとほぼ同じ大きさで、2P2Tです、知らんけど。今回は、新たに購入するのでなく、40年ほど前から部品棚で眠っている超小型トグルスイッチがあるので、その子に活躍してもらうことにしました。超小型トグルスイッチのクローズアップを図6に示します。
図6 - 超小型トグルスイッチ
ちなみに、プリント基板上のスライドスイッチをトグルスイッチと差し替えますと、スイッチの構造上の違いから、左右が逆になります。それが不都合な場合には、トグルスイッチの端子とプリントパターンとの間を導線で配線する必要があります。今回は、スライドスイッチを取り外したところへそのままトグルスイッチ植えて端子を半田付けすることでスイッチをプリント基板に固定したかったので、左右が逆になることは受容としました。
2P2Tトグルスイッチの1回路は、端子のリード線直角に曲げて、スライドスイッチの端子を抜いた穴に挿入しました。もう1回路は、予め端子のリード線から被覆導線(黄、青,緑)を引き出しておき、反対側をしかるべき回路に接続です(図7)。
図7 - 1P2Tスライドスイッチを2P2Tトグルスイッチに植え替え
先達様が公開してくださった動画1では、CF210SPにもともとあった赤色LEDを赤緑2色発光できる3本足のLEDに交換してました。筐体前面裏側のLED受けは、LEDをひとつだけ受ける想定の形状なので、その方が洗練されていることは自明だと思います。しかし、小生の部品棚には、40年ほど眠っている緑色LEDがあるので、その子に活躍してもらうことにしました。古くても使えました。高輝度LEDではありませんがむしろ眩しくなくて良い感じです。このラジオの電源は3Vの乾電池なので、LEDの直列抵抗は無し(ゼロオーム)でも大丈夫そうですが、一応念のため、図1に示すとおり、100オームを直列に入れておくことにしました。
図8でいうと、赤LEDの下側に密着状態で緑LEDを接着しました。図8に示すとおり、緑LEDのアノード(長い足)に赤色の被覆導線、カソード(短い足)に黒色の被覆導線を出しました。
図8 - トグルスイッチマウント後のプリント基板部品面
緑LEDから出した赤・黒の被覆導線及びトグルスイッチから出した黄・青・緑の被覆導線の接続先を図9に示します。なお、赤色被覆導線は100オームの抵抗器を介してプリント基板のパターンに接続します。100オームの抵抗器には熱収縮チューブを被せてあります。
図9 - トグルスイッチマウント後のプリント基板パターン面
CF210SPの筐体前面裏側にあるLED受けは、LEDをひとつだけ受ける想定の形状なので、このままでは緑LEDからの光が外から見えません。赤LEDは高輝度なのでどこに置いても光れば外から見えます。だから、このLED受けには、緑LEDの頭を突っ込むのがよいと思います。但し赤LEDの光もLED受けから外へ出るように、LED受けの筒構造を適当に壊しました(図10の赤矢印で指す)。
図10 - 筐体前面裏側のLED受けの加工
赤LED及び緑LEDとLED受けとの位置関係を図11に示します。
図11 - 筐体前面裏側のLED受けにLEDを納める
図12は改造を終えたプリント基板を筐体に納めたところです。
図12 - 改造後のパターン面
筐体の前面と背面とを合わせてネジで止めて組上げた状態でトグルスイッチの様子を眺めてみました(図13,図14,図15)。本体の天井右側にあったスライドスイッチがトグルスイッチに替わりました。スイッチのところに「FM-TV AM 」という刻印が見えます。スライドスイッチだったときには、左へスライドさせるとFMモード、右へスライドさせるとAMモードになりましたが、トグルスイッチに替えたので、左へ倒すとAMモード、右へ倒すとFMモードになります。
図13 - 筐体前面から見たトグルスイッチの様子
図14 - 筐体の上側から見たトグルスイッチの様子
図15 - 筐体前面斜め上側から見たトグルスイッチの様子
トグルスイッチを左へ倒すとAMモードになります。AMモード時はPOWERインジケータに赤LEDが点灯します。
図16 - AM受信モード
トグルスイッチを右へ倒すとFMモードになります。FMモード時はPOWERインジケータに緑LEDが点灯します。
図17 - FM受信モード
図18 - AM/FMモード(LEDの色に注目)
改造作業が完了しましたので、試しにFM及びAMを受信してみました。せっかくなので動画にしました。定量的な比較をしてませんし、受信環境はできるだけ同一にすることはできるのですが、電波状態、特にAMは、日時等により結構変わりますので、定性的な比較をするのも簡単ではありませんが、バイアスがかかっているとは思いますが、あえて、感想を述べてみますと、改善効果はあったように感じます(動画2)。
動画2 - FM/AM受信テスト(改造後)
CF210SPのロッドアンテナはFM専用です。AM専用のアンテナはプリント基板上にあるバーアンテナです。ロッドアンテナは縮めると9.5cmで伸ばすと26cmです。動画2のFM放送受信テストでは、ロッドアンテナを伸ばして受信したり、縮めた状態のところへ外部アンテナ(2階のバルコニーに設置してある430MHz帯のアマチュア無線用モービルホイップアンテナ)を接続して受信したりしました。
図19及び表1に示すFM放送受信実験では外部アンテナを使いません。両端にミノムシクリップの付いた56cmの導線をロッドアンテナ(26cmに伸ばした状態)の先端につけたら、ロッドアンテナだけでのときよりも聞こえる放送局の数が増えました。
図19に示すとおり56cmの導線を、先ずは2本、ロッドアンテナの先端に追加してみました。もちろん受信実験の際には、ロッドアンテナと共に一直線になるように伸ばしました。
図19 - ロッドアンテナを延長して感度をあげる
FM放送の受信に使うロッドアンテナやワイヤーアンテナは、長ければ長いほどよいとは限りません。むしろ4分の1波長(1/4λ)くらいの長さにしておくのが適当です。ロッドアンテナ長が26cmで、ミノムシクリップ付導線1本の長さは56cmですから、合わせて82cmとなります。文化放送は91.6MHzなので82cmが1/4λです。偶然にも、ロッドアンテナ長26cmとミノムシクリップ付導線長56cmと一致しています。即ち、CF210SPのロッドアンテナを伸ばしたうえにミノムシクリップ付導線を1本だけ足してやるのが最適であろうと予想することができます。
表1 - ロッドアンテナに導線を追加
| 放送局 |
周波数(MHz) |
ロッドアンテナ で聞こえた |
アンテナ延長 で聞こえた |
1/4λ |
追加長 |
| ニッポン放送 |
93.0 |
△ |
〇 |
81 |
55 |
| ラジオ日本 |
92.4 |
△ |
〇 |
81 |
55 |
| 文化放送 |
91.6 |
× |
〇 |
82 |
56 |
| TBS |
90.5 |
△ |
〇 |
83 |
57 |
| インターFM |
89.7 |
× |
〇 |
84 |
58 |
| FMヨコハマ |
84.7 |
〇 |
〇 |
89 |
63 |
| レディオ湘南 |
83.1 |
〇 |
〇 |
90 |
64 |
| NHK-FM横浜 |
81.9 |
〇 |
〇 |
92 |
66 |
* * * * *
このブログに記した改造とは別の改造を楽しんでいたとき、ふと気が付くと、FMモードにしたのにAMモードの赤LEDが消えなくなってしまいました。原因を調べたら超小型トグルスイッチの電源回路側のスイッチ機能が常時短絡状態という故障でした。幸い、部品棚に、もうひとつ同じ部品がありましたので交換して修理を完了することができました。良い機会なので故障している超小型トグルスイッチを分解して中身を見学することにしました(図21)。
図20 - 故障した超小型トグルスイッチを分解してみた
* * * * *
CF210SPというラジオ組み立てキットは、よくできていると思います。完成品の性能が実用に耐えるという意味ではありません。教材としてので出来が良いと感じたのです。秋葉原、日本橋、大須などや通販で適切な部品を探すにはそれなりのスキルが必要ですから、キットに部品の不足が無いことは、絶対に必要です。
資料として1枚ペラが同梱されていて、回路図、実装図、部品表、動作説明が印刷されてます。中国語なので、昔なら非常に敷居が高かったと思いますが、今は、スマホで撮影すれば翻訳してくれますので敷居は低いと言えます。
教材のバグは生徒側の課題には成り得ませんが、CF210SPはプリント基板と回路図とが一致しているので教材として良好です。
エッチング済のプリント基板が同梱されているので、自分でプリント基板を製作する必要がないのは大いに助かります。最近は、エッチング液をそこいら辺に廃棄してしまうのはダメなので廃液処理の敷居が高いのです。
FM用のIC1は表面実装パッケージなので、初心者用のキットとして不適切だと絶対的な評価をしているブログや動画がありました。初心者にもかなり幅があることは自明ですから相対的に評価しないと伝わらないと思います。半世紀前とは違い、表面実装はあたりまえに使われますので、IC1が表面実装品であることは、むしろ教材として妥当だと思います。しかも、IC1の実装位置は、プリント基板のほぼ中央なので、作業性は良いと思います。また、手作業でプリント基板に実装する際の部品の順番及び半田ごて先の種類についても学ぶ機会にもなると思います。
ラジオ組み立てキットCF210SPの再現性は良好だと思います。ネット検索してヒットした範囲で判断すると、例外もありますが、正しく組み立てるだけで何かしら放送局を受信できているようです。小生の場合も組み立てただけで、どこかの放送局を受信できました。組み立ての楽しみが得られて、とりあえず受信機能が動作したところで感動を味わえるというわけです。次のステップとしては、受信周波数帯と周波数目盛りとを揃えるにはどこをどう調整したらよいかという課題にも取り組めます。
FMはIC1を利用するPLL方式で、AMはIC2を利用するストレート方式です。全部ディスクリートでトランジスタを使った回路、例えば6石スーパーヘテロダイン方式のラジオ等とは異なり、いわば心臓部がIC化されてブラックボックスになっています。ブラックボックスの中身を勉強する方向へも行けますし、ブラックボックスの機能レベルの理解へ進むとか、それらの機能をいかに使いこなしてラジオとなるのかといった方向へも行けます。即ち勉強の動機を与えてくれる教材として優れていると思います。
ある程度機能がブラックボックス化されているので、その周辺を改造するという方向でもそれなりの勉強になると思います。
以上
























