Kiss the rain Ⅰ~無理しちゃって…嫌になる 私 捨てられた猫は もう拾わないわよ? | かおり流 もうひとつの「宮」

かおり流 もうひとつの「宮」

「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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きらきらコチラは今回初の当サイトオリジナルキャラ キム・ミニョンが主人公のサイドストーリーです

 

現在チェギョンが行方をくらました理由をうやむやに…
ギョンのサイドストーリーで本編の様子を匂わせて見たり…
シン目線のみで本編の更新を続けていますが…
その状態での本編更新には無理があるために 敢えて本編の更新をストップして
シンのあずかり知らないミニョンの事情を明かしてから次に進みたいと思います
サイドストーリーをお読みで無い方にはまことに申し訳ないのですが
正直本編より先に色々判明してしまいます事を どうぞお許しください

このお話は サイドバーの音楽を停止してこちらをお供にどうぞ

注意初めての方は本編はじめましてから順に読み進めて読みください

お探しのページがあれば目次をお使いください→全体の目次


 

大学二年の長雨を前に… ふにゃふにゃの甘ちゃん妃宮が…失踪した
どうして今更…?
貴女だから… 此処に… 彼の隣に居たのが貴女だったから 憎しみも苦い恋も 全て忘れようとしてたのに なんで今になって全部捨てて逃げるのよ!?


夏の日差しが柔らかな秋の色を纏い始める頃
景福宮の香遠池(ヒャンウォンジ)に浮かぶ香遠亭(ヒャンウォンジョン)で…夏の間殆どその姿を見せなかった殿下を励ます目的で催された茶会の後
私は 皇后さまの遣いだという尚宮の後ろを 不思議な気持ちで付いて行く
皇后陛下がご自分の私室である交泰殿(キョテジョン)に 私なんかを何故お呼びに?

皇后陛下は挨拶もそこそこに 前置きも無く 皇太子が笑ったように見えたが 何を話したのだとお訊ねになられた
切羽詰ったご様子に… 観梅会の時に初めて実感したことを思い出す
皇后さまは これでも皇太子殿下の母親なのだと
これでもというのは…悪い意味では無くてよ?
恵政殿皇太后さまは もっとずっとあからさまに大君殿下の母親だから…

 

 
「特に何も…ただ…
私も妃宮さまが自ら殿下のお側を離れたとは思えず
お戻りを望んでいると…」
ゆっくりと顔をあげ 皇后さまのご尊顔を目にした瞬間 息を飲み言葉を打ち切った
「いけなかったでしょうか…」
こんな顔…見た事ない…哀しげなお顔
内命婦と外命婦を統括する凛としたお顔は何処にもなかった
「そうか…
そなたが…他とは違い唯一シンの心に寄り添うてくれたから笑みを浮かべたのであろうな…」

そう仰られたけれど… 本当にそうだったのか 自分でも良く解らなかった
彼にあの子を早く忘れろと言うなんて 土台無理な話だもの ただそれだけよ
それに…忘れろ忘れろと言われ続けていたから…なんだかとても気の毒で…
信じて待っても良いんだと…ただ そう言ってあげたくて…
随分軽率で無責任な発言よね
帰って来たからって 簡単に元に戻して貰えるわけ無い

それにしても 皇后陛下の真意がさっぱり解らない どうして私が春休みに東宮殿でチェギョン妃の怒りを買って打たれた無礼者だと知りながら あんな事を仰ったんだろう

「キム・ミニョン…単刀直入に聞こう
そなた…皇太子の継妃になりたいとは思わぬか?」
「…え?」
聞き間違いだとしか思えず狼狽える私に
「皇太子の妃にならぬかと聞いたのだ
その気があれば 私が王族会に推そう
考えておくが良い」
「は…はい」
はい以外には何も言えず 何も聞けず 下がって良いと仰られ…

後日 東宮殿の皇太子に会いに来なさいと 皇后さまの尚宮が迎えに来た


久し振りに訪れた東宮殿の洋館…
そこに在った彼女の屈託ないあの笑顔は今此処に 無い
雨降る午後…恐る恐るドアを開けると
哀しみを隠そうともせずに 彼が弾いているのは…
韓国人ピアニスト/イルマの『Kiss the rain』

うっかり私の手から滑り落ちた携帯電話が 床に弾んでけたたましい音を立ててしまう
明らかに邪魔をした私は 怒鳴られるかと身を竦めた
「오 왔구나?/オ- ワックナ?/ああ…来たんだな?」
なにその笑顔…完璧なプリンススマイルでは無いけれど 取り繕うような儚い微笑みを浮かべる
ち…無理しちゃって…ホンット嫌になる
私 捨てられた猫は もう拾わないわよ?


思い返せば 彼に復讐を挑んで以来 いつも苦い思いばかりしてきた
思い通りに行かずに苛立ち うまく行ってもスカッとする事なんて無かった

王立大学に進んだ彼らとは別の ソウル音楽大学に進んだ私に入った従妹のミルからの電話の内容には 唖然とした
「皇太子妃殿下に 猫を飼うことになったから貴女を誘って見に来ないかと言われたんだけど 正直私 猫なんて………」
ミルはなんで誘われたんだか ただのペット自慢なのかと不思議がってたけど…
あんな話… 覚えてたんだ…

芸術高校を卒業し 音大へ進む前の短い春休みに 初めてあの男の住まいである東宮殿の洋館へ足を踏み入れる時 私の胸の中は黒く霞んでた
気絶している夫の唇を奪った女が 突然自分たちの城に押し掛けてきて…
あからさまにビクビクしてたお譲ちゃんが…
あれは人工呼吸だったって言ったら あっさり信じて詫びて礼を言うなんて 拍子抜けよ…
その時に 友人の飼い猫が子猫を産んで…最後の一匹を譲り受けたいのだけれど 東宮殿では動物を飼えないって残念そうに言うから
たった一言 私も幼い頃 捨て猫を拾ったら返しに行かされたと 口にしただけだったのに…

二度目に東宮殿へ行ったのは そう 彼女に猫を見に来いと 従妹のキム・ミルを通じて招待されたからだった


私を東宮殿に招き入れ 青い瞳の黒猫を手渡す彼女は…私の事なんか 微塵も警戒していなかった
ホントなんていうか呆れて… とにかく腹立たしかった
ミルの言う通り あの子は相当なお人好しだった
でもまあ標的はあの子じゃないんだし あの子とは正反対に あの男は 帰宮するなり真っ蒼になって私達を追い返したんだから 成功よ
まるで 自分の留守中に敵に踏み込まれて愛妻に危険が及んだかのような驚愕っぷり
まぁ 当たらずとも遠からず…いえ 当たってるか
彼女の心にも体にも 癒えない傷を追わせたのは 私だものね


「あんただけでもうんざりなのに そんなもの拾ってこないで頂戴!」
そう言われて 雨の中で鳴いていた捨て猫を戻しに行くしかなかった
ミュー ミュー
八歳の私にできるのは 元々入れられていた段ボール箱に タオルを敷いてやるくらいしかなかった
雨音に掻き消されそうなか細い鳴き声 公園のトイレ 雨に濡れない場所を選んで 置き去りにするしかなかった
「ごめんね あたし あんたを飼う資格が無いんだ… 誰かいい人に拾って貰ってね?」
つぶらな瞳の真っ黒い子猫だった

両親は 七歳の私を捨てた
詳しい経緯は忘れてしまっていたけれど
父の弟である叔父(今の養父)に引き取られたあの日の記憶だけはハッキリ有った

あれも雨の日だった それも大雨
母と一緒に 私達が元住んでいたお屋敷に叔父さんを訪ねて…
母は叔父夫婦に 私を暫く預かって貰えないかって言った
赤い傘をさした母の背中が 降りしきる雨の向こうに消えて行くのを ずっと見送った

数か月たっても母は戻ってこなくて
叔父さんは 嫌がる叔母さんを説き伏せて 入学しそびれていた王立学校の初等部に入学させてくれた

「あんたの母親 戻ってこないらしいわ 再婚したんですって
再婚相手には 初婚だって嘘ついてるらしいから 母さんの為に此処に居てやりなさい」
叔母が私に教えてくれたのは親切心なんかじゃない
叔母は 子供が嫌いだった
それでも 養子縁組に応じてくれて正式な養女にしてくれた
本当は私 弟か妹が欲しかったんだけど無理そうだったから 子猫ならいいかなって思ったのに 叔母さんは猫も犬も嫌いだった

「ねえミニョン?
私があんたを好きじゃないって事くらい とっくに気付いてるでしょうけど
別にあんたが特別憎いってわけじゃないわ?
そうねぇ~ だから
一応 叔父さん叔母さんじゃ無くて お父さんお母さんって呼びなさい
だけど いくらお義兄さんの子だといっても 自分の子じゃないんだし
お金はあの人が充分稼いでくれるんだから 必要な物を買い揃えるくらい私がとやかく言うこともないけれど 節度は持って頂戴?
それと
小さいからって必要以上に私に甘えないで?
学校だってあるし 必要が有れば それなりに母親役を演じてあげるから 
いつか 良いとこにお嫁に行くことね
金家の跡取り婿なんて 要らないわよ?
外命婦の奥方連中なんて私 大嫌いなの」

彼女の決めたルールを守りさえすれば 冷たく当たられる事は無かった
お屋敷には家政婦さんが何人も居たし 叔父さんは今も健在だし シンデレラみたいに家事を強いられたり 義理の姉と差別されることも無かった
今思えば 弟か妹が生まれてたらそれこそ差別されてたかもしれないわね ふふふ

ただ 時々思いがけない事が起こって 叱られる事が有った

「誰があなたの友達を勝手に家に入れて良いって言ったのっ!?」
手を振り上げはしても 打たれはしなかったし
友達の前ではちゃんと母親役を演じてくれたから 従った
「ごめんなさい叔母さん…もう 勝手に連れてきたりしません…」
新たなルールを作る ただ それだけ
「わかればよろしい
あら なにも脅える事無いじゃない 怖かったの?
カッとなってごめんね ミニョン
人前でなくてもお母さんと呼んで良いのよ?」

動物を拾ってこない事も 新たに追加されたルールの一つに過ぎない
私が捨てられた理由や 両親の居場所を知りたがらない事もルールのひとつ
どうってこと無い 世の中には実の親に暴力を振るわれる子だって居るんだもの
これくらい 何でも無いわ

「ミニョン 猫を飼いたかったんだって?」
叔父さん…
「ううん…ただ 雨の中で鳴いてて 可哀想だったから…」
私みたいで…
「本当にいいのか?
お母さんの目に入らない飼い方をするなら飼ってもいいんだぞ?」
「いいの… きっともういい人に拾われてるよ」
私みたいにね…
「いつでも父さんに相談するんだぞ?」
叔父さんは優しかった だけど 迷惑は掛けられない
叔母さんだって別に悪い人では無い 好き嫌いがハッキリっしてて 気性が荒いだけ
叔父さんは そんな叔母さんをちゃんと認めているから 叔母さんに愛され きちんと敬われている
「心配しないで?私 叔母さんの事好きよ?」
「お母さんだろう?」
「あ~ うん…そう お母さん」
ペロッと舌を出して笑ってみせると 頭を撫でてくれた
私は決して不幸なんかじゃなかった


王立学校の初等部は 綺麗な服を着てくる子ばかりだった
私の蹴ったボールが ある女の子の服を汚して その子には取り巻きが沢山居て その場で跪かされ 詰られた
でも 私の従妹のミルはおチビのくせに負けん気が強くて 相手の一番大きな子に飛びかかった
それで…大人たちまで出てきて大騒ぎになって 叔母さんも謝りに行かなきゃで…
私はきっと凄く叱られて 新たなルールを決めなきゃならなくなるんだと脅えてたのに…
「腹が立つわね!学校に高い服なんか着てくる方が悪いのよ!ミル良くやったわ!」
ミルが叔母さんに褒められてた
えっと…新たなルールは?
「あんたもミルを見習いなさい!いいわね?負けちゃダメ!」
そうか…新たなルールは…えっと負けない事?覚えて置かなきゃ…
驚いたことに 取り巻きが全部ミルに移動した
私はミルのおかげで 学校では誰も恐れる必要が無かった

「ねえ皇太孫さま素敵ね~」
みんながそう言うようになったのは 初等部四年生くらいだったろうか…
「ミニョンも皇太孫さま好きでしょ?」
「え?ええ…そうね…」
まあ確かに 子供っぽい男の子達と違って穏やかで 輝いて見えた
だんだん 私も皇太孫さまに惹かれて…

「ミニョンまで あんなのがタイプなの?
本ばっかり読んで 外で遊ばないらしいわよ?運動神経はどうなの?
というより私はあの仮面みたいな薄っぺらな表情が嫌いだわ」
ミルだけは そんな調子だった
そっか 別に 皇太孫さまを好きじゃない子も居るんだね…
ところが皇太孫さまは脚も早かった
運動会ではいつも 一番か二番だった
「二番だったじゃない」
「真剣に走らなかったからよ」
「へ~ 真剣に走らないなんて 卑怯よ」
「皇太孫さまは色々大変だから 運動会なんかに必死になったりしないのよ!」
「なにそれ ヘンなの!」

私が彼を本当に好きになったのは 五年生を終える頃だった
退屈な卒業式に参加したくなくて 列を外れて音楽室に入り込んだ
ピアノの椅子に座って
「初等部を卒業しても 同じ敷地内の中等部に進学するだけなのに… 卒業式に意味なんか有るのかしら?」
そう呟いたら ピアノの陰から
「君もサボりなのか?」
ピアノのすぐ傍に 体操座りで小さく体を丸め 息を潜めていたらしい男の子が すくりと立ち上がった
「ひっ こ…皇太孫さま?!」
急に声を掛けられ 驚いて声をあげる
「しっ!」
人差し指が…私の唇に触れた
「来年は主役だからね サボるなら今年しかない 君も五年生?」
皇太孫さまの人差し指が私の唇に触れたままだったから そうっと首を縦に降る
「ピアノ 弾けるの?」
それでもまだ唇から指が離れないから 今度はそうっと首を横に振る
やっと指を離してくれて 私の隣の椅子に腰かけた
「そう 僕は練習中 でも他の勉強が多くてね…優先順位が低いんだ 僕はピアノの練習が一番やりたいのに さ…」
寂しそうな表情…やりたいことをやりたいだけ出来ないんだ…
私も…
「私も…弾けるようになりたい」
なんでだか 誰にも言った事無かった事を 初めて口にした
「習えばいいんじゃない?君も他の勉強が多いの?」
「いえ…特には…」
そっか 弾けるようになるには習うのか…考えたことも無かった ただそれだけ

「やりたいことは やれるうちにやっておかなきゃ きっと後悔するよ?」

ひっそりと息を潜めて目立たないようにやり過ごす日々の中で…
何かをねだったことなどただの一度も無かった
ピアノを習いたいとねだっても いいのかな…?
「じゃあ もう行くね」
ぼんやりしている私を怪訝な顔で見てた皇太孫さまは 居心地が悪かったのか…
私を残して 行ってしまった

私はピアノを習い始めた
それと…合唱団にも入った
あの日 帰宅して
「ピアノを習いたいんだけど…」
恐るおそる言ってみたら
叔母さんは 「いいんじゃない?」としか言わなかったし 叔父さんはすごく喜んでくれた

翌年の卒業式で 皇太孫さまは卒業生代表の挨拶を 私は別れの歌のピアノを弾いた
彼の一言で習い始めたピアノはたった一年で 卒業式でピアノを弾く代表に選ばれるほど上達したというのに
彼は そんな事が有った事も 私の事も 全く覚えてはいなかった

 

 

今日もありがとうございますカムサハムニダ

 

本日8/22(水)より 新シリーズサイドストーリー「Kiss the rain」5~6話です
本編をお待たせしますが 敢えて挟ませて頂く必要がありまして…
しかも…
此処まで入れてしまいたかったので かなり長くなってしまいましたね みあねよ

 

 


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