中国の作家、莫言氏が2012年のノーベル文学賞を受賞することにきまった。莫言氏は紅いコーリャンや至福のときの原作者でもある。いずれも張芸謀監督が映画化した。なかでも至福のときは名作だ。原作とはかなり筋だてが違うが、涙なしでは見れない作品になった。舞台は近代化が進む大連。盲目の少女薫潔は、太った継母と義弟にいじめられながら生きている。実父は深圳に出稼ぎに行っており、薫潔は父親と会うのが唯一の楽しみだが、連絡がとだえていた。ある日、継母に求婚する中年男趙本山現われた“至福旅館の経営者だという趙に、継母は薫潔を按摩として働かせるように頼み込む。しかし趙は本当は国営工場をリストラされて失業中で、廃車されたバスを利用してラブホテルを経営しようとしていたが、大連市から撤去命令が出て計画は頓挫していた。工場をリストラされた男がラブホテルを経営するストーリーは原作そのままだ。何とか結婚したい趙は工場仲間の協力を得て、閉鎖中の工場に按摩室を作り、同僚たちに客のふりをしてもらう。仕事をして稼ぐことで、徐々に明るくなっていく薫潔。趙も、彼女に娘のような愛情を抱くようになった。趙と心優しき仲間たちは、薫潔のために懸命に芝居を続けようとする。この筋だては原作には全くない。少女のけなげな姿と名もなき心やさしき人々の触れ合いは張監督の真骨頂だ。しかし薫潔は、実は彼らの芝居に気づいていた。彼女は彼らの優しい気持ちを汲んで彼女自身も芝居をしていたのだ。その後、悲劇が訪れる。趙は交通事故で急死する。彼が死んだあと同僚の手により趙が薫潔の父親になりすました手紙を朗読する。趙の優しい心が伝わる手紙で涙なしでは聞けない。莫言の一種のピカレスク小説が張監督によって感動ドラマに見事に作り変えられた作品だった。
 

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芙蓉鎮をPPSで観る。毛沢東逝去、四人組放逐をもって文化大革命は終焉したが、文革の始末において中国映画は日本映画が大東亜戦争の始末をしなかったことに比して凄まじい。中でも芙蓉鎮は“文革”の表現そのものについて言えば、悪人が悪をなし、善人が被害を蒙るという常套パターンを越えていないが、この映画は文革の前駆現象とも言うべき四清運動から始まっていて緊迫した展開となっている。そもそも四清運動は初め人民公社の帳簿,倉庫,財産,労働点数の四点を清めるということで〈四清運動〉と呼ばれ、都市では,汚職や官僚主義批判の運動としてすすめられた。映画では四清運動の工作組が芙蓉鎮に進駐した時,人の背丈の半分以上もある大標語がこの小鎮の街頭に貼り出された。“階級斗争を忘れるな!この作品の中では,“ 四清運動”は文化大革命の予行演習のように見えるが,ただその矛先はやや異なり,主に経済的なものに向けられていた。しかし人々を不安に陥れることと闘争の残酷性は小“文革”そのものだったのである。この運動の背景には,社会主義の行方をめぐる激しい路線対立があった。すなわち,社会主義社会にあっては階級闘争は消滅した、重要なのは生産の組織化だとする劉少奇らに対して、それに反対する立場をとる毛沢東の対立が背景にあった。毛沢東は、1962年の全人代で、社会主義社会を貫いて階級闘争が存在するという過渡期階級闘争理論を打ちだし,それをふまえて社会主義教育運動を発動したのである。この映画の主人公の一人である工作組長の李国香は米豆腐店を営む胡玉音夫婦の收入が“省級干部”に劣らないことを知り,周辺調査を行う。糧店経理の谷燕山は胡に一万斤余の碎米を売り渡していたことから,胡玉音と不正常な男女関系にあると見なされてしまう。芙蓉鎮党支部書記の黎満庚は迫られて胡玉音から預かっていた1200元を提出し,良心を売り渡してしまった。胡玉音本人はやむをえず一ヶ月余り身を隠したが,戻ってみると年下の夫桂桂は殺され,新築の家も沒收されていた。ところで李国香という存在はこの作品の主題の深化に役立っている。彼女はもとは国営食品店の店員であったが,“四清運動”の後,県委常委、公社書記になった。“文革”前期には,彼女も当権派として引き出され,街頭を引き回され,“五類分子”の胡玉音や“秦癲子”と一緒だったが,これは彼女の望むところではなく,彼女自身は自分が難に遭っても他人に同情することはなかった。まもなく,彼女は文革”領導班に招かれ,再び県委常委,公社革委会主任に任じられ,ジープで芙蓉鎮へやって来て今度は抑圧する側に立って悲劇を繰り返したのである。何という皮肉なテーマだろうか。


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昨今の反日デモは尖閣問題だけではなく、昨年から相次いで上映された張芸謀の作品も影響しているのではないか。一つは南京大虐殺がテーマの『金陵十三釵』。中国映画史上最高額となる製作費6億元を投じた超大作で、昨年の中国の年間総興行第1位と大ヒットし中国社会に大きな影響を与えたという。ところが、この映画、日本では未公開なのだ。日本兵によるリアルで残虐な戦闘シーンや、中国人女性への強姦や輪姦、殺戮シーンなど反日感情を刺激する日本軍の残虐性を強調するシーンが多く、上映中、中国の映画館内では、すすり泣きと日本人を罵倒する声があちこちから聞こえたという。またインターネット上にはこの映画の影響を受け反日を叫ぶ書き込みが溢れ、この映画を鑑賞した人気歌手の韓紅が中国版ツイッター・新浪微博に日本を罵倒する書き込みをして話題になった。韓紅と言えばチベット族出身で、北京人民解放軍芸術学院でアランの先輩にあたる。それと、反日デモの原因となったであろうもう一作は「サンザシの樹の下で」である。この作品でも映画の冒頭でサンザシの樹が出てくるが、抗日戦争で日本軍に銃殺された兵士の血が染み込んで赤い花が咲くようになったという。さて、この映画の舞台は文化大革命下の中国。都会で暮らす女子高生ジンチュウは下放運動の一環で寒村へ送られる。村長の家に下宿することになった彼女はそこで村長一家と家族同然に暮らす地質調査隊の青年スンと出会い恋に落ちる。しかし、反革命分子と見られている彼女の両親の存在からこれは叶わぬ恋だった。主演の周冬雨の可憐な演技が素晴らしい作品である。
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